双星の魔導師と巫女-6
「どこの国から?1人で来たのかい?ご両親は?」
「コラコラ、学長。そう矢継ぎ早に質問されたらお嬢ちゃんも困っちゃうよ……ねぇ?」
医務室職員のおばちゃんに突っ込まれたベルリアは、キョトンとしているミヤを見て反省した。
「う……すまない」
素直に謝るベルリアにミヤはくすりと笑って、質問に答える。
「東の島国、ファンから参りました。途中まで知り合いに送ってもらいまして、両親はファンに居りますわ」
「ファン?!」
ゼビアから軽くひと月はかかる場所にある国から来た、と聞いてベルリアは度肝をぬかれた。
「ええ、ファンでは魔力持ちはめったに産まれないので魔法の事が勉強できませんの」
それにしてはさっき、男達にかけた魔法は的確で巧みだった。
ちなみに、暴挙を働いた男達は広場の真ん中で『幼き少女を暴行しようとした不埒者につき、手出し無用。学長』と貼り紙をして魔法陣に縫い付けられたまま晒し者になっている。
ベルリアの疑問が分かったのか、ミヤはさらに話を追加した。
「基本的な魔法は教えて下さる方が居りまして……その方が、わたくしには医療魔術が向いているとおっしゃいましたので」
そこで、まず医師免許を取得してからゼビアに医療魔術を習いに来たのだ。
「ちょーっと待って、その若さで医師免許?!」
普通、医師免許を取るまでには最低でも10年はかかる。
「ああ、わたくし成長速度が遅い種族でして……こう見えても35歳ですの」
「本当かい?」
ベルリアは驚いて自分を指差した。
「私も……というか、私達もそうなんだよ……これでも110歳だ」
「まあ、そうなんですの?」
ミヤは両手を口に当ててまじまじとベルリアを見る。
どう見ても20代後半か30代前半だ。
しかし、こんな所で同族に逢うとは……なんとなく嬉しくて2人は見つめ合う。
「はいはい、続きは違う場所でやっとくれ。痣は直ぐに消えるし、他に怪我はないよ」
おばちゃんに再度突っ込まれ、ベルリアはポリポリと頭を掻き、ミヤは頭を下げてお礼をするとにこやかにベルリアを見上げた。
いくら35歳とはいえ見た目が幼いので危ない……というわけで、ベルリアは学校近くの食堂兼宿屋を紹介した。
そこは若い夫婦が経営しており小さい子供が2人居るので、店の仕事を手伝えば食費がタダになる。
朝と夜、仕事を手伝いながら学校に通うミヤは人気者になった。
見た目を裏切る柔らかい物腰と溢れる母性、豊富な知識に意外と芯のある態度はしっかり者の働き者として認識されたのだ。
そして、ベルリアとリンもミヤが気に入り、ちょくちょく下宿先に顔を出した。
なにより、3人で話が出来るのが嬉しかったのだ。
ファンの事、ゼビアの事、お互いの話……色んな話をすればするほど、ベルリアはミヤに惹かれていった。
一気に火が着く燃えるような恋ではないが、それはじわじわと体の奥から湧き出てゆっくりと体中を満たすような恋心。