双星の魔導師と巫女-11
「ミヤ?」
そろそろ離してくれないと本気でヤバい……自分の心臓がうるさくてたまらない……。
「わたくし……我が儘なんです」
「は?」
いったい何の話だろうか、と疑問が浮かんだおかげで少し心臓が大人しくなった。
「貴方が好きです」
ドゴンッ
せっかく大人しくなった心臓が口から飛び出るかと思うくらいに飛び跳ねる。
「でも……医療魔術を習得したらファンに帰ります……守護神様に一生を捧げる事がわたくしの夢であり、誇りなのです」
ベルリアはミヤの腕に重ねた手に力を入れた。
「それでも……全てを貴方に捧げる事が出来なくても……せめて、ここに居る間だけ……」
「ミヤ!」
言葉の途中でベルリアは無理矢理ミヤの腕を引き剥がしてミヤに体を向ける。
ミヤの目からは涙が溢れ、今にもこぼれそうだ。
ミヤの肩に手を置いたベルリアはその顔を覗き込む。
「ごめんね……」
ベルリアの言葉に震える両手を握りしめたミヤは、そっと目を伏せて首を振った。
溢れていた涙が目から頬をったって流れ落ちた。
「わたくしこそ、困らせてしまってごめんなさい……」
「いや、そうじゃなくて……」
ベルリアは身を屈めると流れた涙を唇で拭う。
「君に……先に言わせてしまった事だよ」
そのままミヤを抱き締めたベルリアは耳元で囁いた。
「どうしても勇気が出なかったんだ……君には大切なものがあるから、邪魔しちゃいけないって……」
ベルリアは少し体を離してミヤと視線を合わせる。
「それに……こんな体だしね……」
ベルリアの言葉にミヤは顔をしかめる。
「こんな体?」
「だって、リンと体を共有してるだろ?」
言われたミヤは驚いて、一気に顔を赤くした。
「やだっ……そうでしたわ……忘れてましたっ」
「はい?」
さっき変化するのを見たばかりだと言うのに……。
「リン様っ?!聞いてました?!」
『聞いていたと言うか、聞こえてしまったと言うか……』
「忘れて下さいっ」
『えっと……とにかく今から閉じ籠るから……心配しないでちょうだい……ベリー?良かったわね』
そう言い残したリンは体の奥の奥に引っ込んでしまった。