第二章―2-5
「へえ・・優しい人なんだねぇ・・」
ニヤニヤしながら瑞稀の話を聞く恵梨。瑞稀は少し顔を赤らめた。
「でも、その話のどこが嘘だったの?」
「それがさ・・教室にまだ傘があるっていうのが嘘だったんだよ」
そう言った瑞稀は呆れたように笑った。それを聞いた恵梨もプッっと笑った。
「え、そうだったの?でもよく解ったね」
「解ったも何も・・次の日風邪ひいて休んだら大体見当つくでしょ・・」
そう、郁真は次の日学校を休んだ。
傘を返そうと思っていた瑞稀は担任の先生に話を聞きに行った。そこで先生同士で話していた、郁真が傘を差さずに全身びしょ濡れで帰ったという話を聞いてしまった。
「もうそれだけ聞いたら笑っちゃって・・」
つい笑いを堪えられなくてそのまま笑う瑞稀に恵梨も釣られて笑う。
そんな2人の頭を小突いて先に行く人影。
「「いたっ」」
2人して顔を上げると零がチラッと振り返って言った。
「早くしないと置いてくぞ」
「零が食べ終わるのを待ってたのに〜?」
恵梨は仕返しとも言わんばかりに軽い文句を言う。それを言われた零は言葉に詰まる。
「・・・・」
「まぁまぁ。零も食べ終わったんだから」
「というか瑞稀、パン、全部零に渡しちゃったの?」
「え?うん・・」
その質問に意図がつかめず首を傾げた瑞稀。
少し間を開けてから零がため息をつく。
「あー・・、非常食ナシかぁ・・」
「えぇ、何なの・・?」
からかわれていることに気づかない瑞稀に、恵梨は諦めの意味で、言葉を濁らせる。
零も呆れ顔で溜め息。
そんな二人に気づかない瑞稀は、首を傾げながらも気にしてない様子で、言った。
「よし、行こう!目指すは商家の街!」
「転ばないでね♪瑞稀」
「早くしないと置いてく」