第二章―2-4
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『うあ・・降ってきた・・』
小6の瑞稀は学校を出ようとして本降りになっている雨にため息をついた。
今日は傘を持ってくる事を忘れてしまった。
『・・東條、何やってんだ?』
『郁真!』
これじゃ、走って帰るしかないか・・と、諦めかけていた瑞稀の後ろから声をかけたのは南雲郁真。同じクラスで良く会話が合う男子だった。(後に、瑞稀の彼氏となる人物。)
『ん〜、見てよ。雨降りだしちゃってさ』
『お、マジだ。良かった、折り畳み傘持ってきて』
そう言って瑞稀の目の前に出す青い折り畳み傘。
『えぇ・・羨ましい・・。どうしようかな、今日大事な用事あるのに・・』
『・・・』
郁真がその言葉に自分の手にある折り畳み傘へと視線へと落とした。ため息をついた瑞稀は諦めたようで、置いていたランドセルを肩にかけた。
『と、東條!』
『?・・何?』
『お前、まさか走って帰るつもりか・・?』
『そうだよ?』
もはや当たり前。と言う瑞稀に、今度は郁真がため息をついた。
『それじゃ風邪ひくだろ。俺の傘、使え』
『え!?べ、別に良いよ!』
目の前に差し出された傘を押し返す瑞稀。
郁真はさらに傘を押しつけた。
『いいから。早く帰らなきゃなんだろ?』
『でも、郁真が濡れるし・・』
瑞稀がそう言うと郁真はそっぽを向いて答えた。
『まだ傘が教室にあるから大丈夫だよ。だからお前は早くコレ使って帰った方がいいよ』
自分に視線を戻して微笑む郁真に何も言えなくなった瑞稀は傘を受け取った。
『ゴメン、明日絶対返すから!』
そのまま青い傘を差して帰った・・。
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