第一章―1-1
文化祭も終わり、徐々に冬へと近づいている今日この頃。
一人の少女が教室の自分の席に突っ伏して寝ている。その少女に近づく、もう一人の少女は背が高く、茶色の編み込みショートヘア。
制服は黒のブレザーなのだが、彼女はジャケットを着用してはいない。
「瑞稀、起きて」
彼女が声をかけ、瑞稀と呼んだ少女の身体を揺するが、未だに夢の中。
「瑞稀!」
「・・・・ん・・・」
先程より強く揺すると、少女は起きて身体を起こした。そして、自分を起こした人物を見上げる。
「あれ・・?恵梨・・?」
「おはよう、瑞稀。」
挨拶と共に向けられた笑顔に寝起きでも精一杯の笑顔を返す。
髪が少し跳ね気味の黒のボブヘア。
制服のシャツの上から着込んでいる藍色のセーター。動きやすいように少し短めのスカート。未だに眠そうな青色の目。
これは、カラーコンタクトではなく生まれながらに持っている目だ。
この少女を、東條瑞稀という。
「瑞稀、早く帰ろう?」
そう優しく言う少女は、瑞稀の唯一無二の親友であり、クラスメート。
この少女を、七瀬恵梨という。
「もうそんな時間か・・。じゃ、帰ろうか」
そう言って机の横にかけていた斜め掛けのスバッグを持ち、恵梨と共に教室を出た。