第一章―1-4
「・・瑞稀」
「・・・・」
「瑞稀!」
「・・んっ・・」
恵梨の強い呼びかけで、普段なら目を覚まさない瑞稀も起きた。
「え、恵梨・・?」
「・・やっと起きてくれた・・」
どうやらずっと呼びかけていたらしい。
「・・ここは・・?」
頭がくらくらする為、頭を押さえながら起き上がる。
恵梨は瑞稀を立たせる為に手を伸ばす。
「あ、ありがと」
「いえいえ。ちなみにここがどこかは知らないよ♪」
「えぇ!?・・・光ってる?」
瑞稀は恵梨の手を掴んで立ち上がりながら辺りを見渡し、素直な感想を言う。
確かに、全体的に光っていて、他に何もない場所。どうやってこんな所に来たかは全く分からない。
「なんか光の神殿って感じだね」
「何そのゲームのダンジョン名みたいな」
「何でソッチ系になるかな・・。でも、そんな感じじゃない?」
「・・う〜ん。」
恵梨の発想に着いていけなくなった瑞稀は、場所の確認をする為、目線をずらす。
すると、視界に入るのはうっすら見えた扉。
「あ、扉あるよ」
「無視しなくていいから。とりあえず、帰れそうにないし、行こうか」
2人は扉を開けて、先へ進む。
廊下も光続けていて、時々目がくらむ。
そして、一つの大きな扉の前にたどり着く。
「あ、ラスボスがいそうな部屋の扉」
「あ、偉そうな人がいそうな部屋の扉」
・・言っている事がかみ合っているのか、いないのか。
「「何その考え」」
・・似たもの同士です。
瑞稀が手を触れると、扉が消えた。
「・・え・・」
「瑞稀、とうとうそこまで力が・・」
「ふざけんなって!」
「冗談だよ、冗談」
「お入りください。お二人とも」
「「!」」
いきなり響き渡るソプラノの声。
2人は顔を合わせ、少しずつ声が聞こえた方へ歩き出す。
次第に光も弱まり。奥が見えるようになる。
奥には玉座があり、見るからにお姫様が座るような椅子が一つ。
その椅子に一人の女性が座っている。
年齢は瑞稀達より上。とても清楚な感じ。
椅子の横には騎士っぽい男性が2人。
「・・誰ですか」
「え、いいの?そんな直球で」
直球で聞く恵梨に戸惑う瑞稀。対して平然としている恵梨。
「クス・・やっぱり、話に聞いていた通りです。面白い人達です」
「・・え?」
「ウチら、褒められてるね?」
笑顔で言う恵梨。それに対して瑞稀は、
「(やっぱりのん気・・)」
と、恵梨の事を再認識。
まぁ、もちろん、恵梨に怒られるので口には出さないが。
「・・何?」
「いや、何でも」
「よろしいでしょうか・・?」
「「はい」」
瑞稀と恵梨のやり取りで全く口を挟めずにいた女性が声をかける。
2人は声をそろえて返事をした。
「まず・・手荒な真似をして申し訳ありませんでした・・・。“バングル”の適応者を探していたのです。ご無礼をお許しください」
「あ、いえ・・って、さっきの人形・・」
ハッとしたように聞く瑞稀。
「あなた・・の仕業だったんですか・・?」
女性は悲しげな表情を見せてから頷いた。
瑞稀がそれを見て恵梨へ視線を向ける。
恵梨には、瑞稀からのSOSと捉えた。
「と、とりあえず、話聞かせてください」
恵梨がそう言うと、瑞稀も顔を女性へと向ける。女性は、「長くなる」と前置きしてから話し始めた。