時々、幽霊?-2
「死に損ないは出ていけっ!!!」
今村の怒号に雑霊達はザアッと潮が引くようにその場から離れ、風を巻き起こして体育館から出ていった。
風が収まると、先程までの嫌な雰囲気が消えていた。
「……校長、1週間以内にお祓いした方がいいっスよ」
今村は校長に忠告すると人混みに戻っていった。
それから、毎日毎日……同級生や先輩、はては教師までもが相談にやって来る始末……今村はいい加減うんざりしていた。
「ごち!!」
回想に耽っている内に高野が弁当をたいらげ、両手を合わせて頭を下げる。
「……うまかったか?」
「おぅ」
空っぽになった弁当箱をキレイに包んだ高野は満面の笑み。
高野は中学が同じで、今村が霊感少年でも気にしない稀有な人物だ。
「……なら良いけど……」
怒る気も失せた今村は弁当箱を鞄に直して、ストローをくわえたまま窓際の席に視線を移す。
そこには、文庫本を読みふける少女の姿。
加藤璃子(カトウ リコ)……最近とても気になる存在だ。
特別可愛い訳じゃない……というか……ダサい。
今時どこに売ってるのか知らないが分厚いレンズの眼鏡に、ぴったり標準のスカート丈。
1度も染めた事などないだろうショートの黒髪だけは艶やかで綺麗だ。
何故こんなに気になるのか自分でも分からない。
恋愛絡みじゃないのは確かだ……好みじゃない……自分の不可解な感情に首を傾げつつ、それでも加藤から目が離せない今村だった。
そして、放課後。
「……なんか、おじさんがおぶさってるっス……」
どうやら今回は本物が憑いてるらしい。
憑かれてるのは数学教師。
「祓ってくれっ」
「出来ねぇっスよ。俺は見えるだけ」
体育館に居たのはいわゆる浮遊霊……ああいうのはフラフラしてるだけなので怒鳴り付ければとりあえずは去る。
しかし、地縛霊だの、とり憑いているなどとなるとそれなりに修行などしなければいけない……ものじゃないだろうか?
自分じゃ出来ないから入学式の時に校長に『祓え』と言っておいたのだ。
「っていうか憑いてるの誰なんだ?」
数学教師に聞かれた今村はため息をつくとおぶさっているオジサンに話かけてみる。
「オッサン、先生の知り合い?」
『…………』
オジサンは口をパクパクさせて何か言っているが良く聞こえない。