カオルC-10
「もらってって、これ、お姉さんの…」
「これさ、あんたが見てたウィッグなの」
「ええっ!」
ひとみの行動が、益々、解らない。
「今日のお礼だからさ、受け取って」
「何言ってんの!お礼の範疇超えてるって」
「いいから!」
ひとみは、強引に手提げ袋を真由美に押しつけ、走り去ってしまった。
残された真由美は、ひとみが消えた方向を茫然と見つめていた。
(どうしよう、これ…)
最後の最後に訪れた災難。
袋の中を覗いた。間違いなく、あのウィッグだ。
(試しに…)
これを被った薫を想像した途端、真由美の芯は、また熱を帯びてきた。
「カオル」C完