C-7
「今日は?どうするの」
「そっちの鍬を使って、黒土を耕すんだ」
哲也は、備中鍬を指差すと、自分はリアカーから唐鍬を取り出して、耕し方を実践した。
「こうやって…」
柄の端を両手で握り、高く振り上げた。
「…振り降ろす」
鍬の先端が、勢いよく黒土に突き刺さる。
「それで、柄をちょっと前に押して後ろに引っ張る」
鍬の動きに合わせて、黒土の塊が裏返った。
「振り上げた後は、頭の重みを利用すれば、あんまり力はいらないよ」
「わかったわ」
「大きな塊は、鍬の反対側で細かく砕いて」
「うん。やってみる」
こうして、2日目の作業が始まった。
「先ずは、真上に振り上げて」
柄の端を持つ手に力が入る。雛子は思い切り振り上げた。
しかし、
「…あわわ!」
勢いがあり過ぎて、後ろに倒れそうになる。
「ぐうう…やあ!」
なんとか持ち直して、鍬を振り降ろした。ザクっという音と共に、4又の先が土に刺さった。
「これで、引っ張って…」
見よう見真似に柄を引くと、黒土が裏返った。
「…上手くいった…」
ひと振り毎に、埋もれていた黒土が地表に顔を出す。何とも新鮮で、不思議な感覚だ。
(昨日みたいに…足手纏いはごめんだ…)
少しずつかたちを成してきた畑作り。雛子は、強い思いを胸に、鍬を振り続けた。
2日目の作業は、夕方前に終わった。要領を得なかった初日に比べれば、ずいぶん動きも効率的になった。
「先生、大丈夫?」
哲也は雛子の様子を見て、心配そうだ。
「大丈夫…昨日よりかは…楽よ」
雛子の方も心配かけまいと、途切れる息遣いながら、笑顔を浮かべた。
「今日は、ここまでにしようか」
「どうして?まだ日は高いわよ」
身体の大丈夫さを訴えるが、哲也は首を横に振り続ける。