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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VQ-8

 これで2ストライク。

(遊びはないな)

 3球目。ピッチャーは、素早いモーションから投げた。右腕が下がってるのを、淳は見逃さなかった。

 打つポイントを前にして、バットを振った。

 キン!──

 充分な手応えを残し、打球はレフトへと高く舞った。
 予め下がっていたレフトが、フェンスを背にして行方を追っている。

(いけ…いけ!)

 淳も、1塁へと全力で走りながら、フェンスオーバーを祈った。
 しかし、ひと伸び足りなかった。レフトはフェンス際から数歩前に出ると、打球をキャッチした。

「ええ〜、マジかよ」

 大飛球を捕られた淳は、2塁手前でしゃがみ込んでしまった。
 大谷西中のメンバーが引き上げる中、虚ろな眼で捕られた位置を見入っている。

「惜しかったね」

 淳の背に声がかかった。佳代が、グラブと帽子を両手で持っていた。

「おまえ…肩いいのか?」

 呆けた顔が、心配そうに訊いた。

「大丈夫だよ。自転車で学校に行ってんだから」
「そうか。早く治るといいな」

 淳は、ヘルメットと手袋を取って手渡すと、帽子とグラブを持ってセンターへと駆け出した。
 佳代は3塁ベンチに戻り、淳のヘルメットと手袋を並べ置き、グランドを見た。

 仲間の快活な姿が眩しく見えた。


 2回表、大谷西中の攻撃。先頭の4番バッターが、右打席に入った。
 さほど上背はないが、がっちりとした体型と太い腕が特徴的だ。

(データじゃ、3番ほどの長打はなかったな)

 肩幅より狭いスタンス。背筋を伸ばし、懐を広く空けるという独特な構え。

(この構え…わざと内角に穴があるように見せてるのか?)

 達也は、探りを入れてみようと思った。

(内角低め)

 直也が初球を投じる。ねじりで生じた力は、腰から背筋、腕へと伝わり、リリースの瞬間、ボールにスピードを加える。

 キレのあるストレートが、内角低めに向かってきた。

 バッターは、一本足ステップで重心を軸足に残すと、思い切りバットを振った。が、タイミングが遅過ぎて空振りしてしまった。

(力み過ぎか。もうひとついくか)

 2球目も同じコース。バッターは、またも空振りした。完全にイメージより手元で伸びてる証拠だ。

(最後はこれで)

 3球目のサインを見た直也は、グラブの中でボールの握りを確かめる──人差し指と中指を縫い目にそえた。
 ダイナミックなフォームから、右腕を振っていく。リリースの瞬間、指先でボールを切るようにして、強烈な回転をかけた。


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