君のいる景色 -7
「お疲れさん、羽馬はどう?」
キャラは冒険者の1人に話しかける。
筋肉ムッキムキの男、実は10人抜きバトルでアースに負けた男だった。
「おぉ、キャラ姐さん。順調ッスよ。かなり快適ッス」
「じゃ、成功報酬。無事に生きて帰れたらプレゼントするよ」
太っ腹なキャラに冒険者達は大喜びだ。
しかし、馴れ馴れしい態度の冒険者にデレクシスは不機嫌な顔をする。
「おっと……カイザスのデレクシス王子じゃねえッスか」
キャラの後ろに立っていたデレクシスに気づいた男は、彼の不機嫌な様子にちょっと引いた。
「現場は実力主義。この人も今は王子様じゃなくて下っ端のデレクでいい。甘ちゃんだから色々教えてやってくんねぇかな?兵士に預けるとどうしても王子扱いになるしさ」
キャラの言葉にデレクシスは嫌だ、と首をブンブン横に振る。
「そういう事なら任せな。よろしくな、デレクの兄ちゃん!」
男はデレクシスの肩を抱いて連れて行き、デレクシスは助けを求めてキャラに視線を送った。
キャラはニコニコと手を振ってデレクシスを見送る。
「うっげ……ぺぺっ……マジで縦穴じゃねぇか……」
その頃、アースとケイは最北の洞窟から地上に出る縦穴の中で蠢いていた。
始めは緩やかな上り坂だったのだが、次第に坂道がキツクなり今や完璧な井戸の中状態……しかも狭い。
「小さい頃はもう少しひょいひょい行けたんだけどな……ぶほっ」
「そりゃ、体が小さかったからだろうが……ああ!!面倒くせぇ!!魔法で吹っ飛ばす!頭下げろ!」
「うわっ!待て待て!!」
「砕!!!」
ドゴン!!!
同時刻、キャラ達の野営地……冒険者達が集まっていた場所の地面が、いきなり人2人分陥没した。
しかもデレクシスと筋肉隆々の冒険者を巻き込んで。
ボコッ
「どわっ」
「うええぇぇ!?」
敵の襲撃かと、全員が身構える中、もうもうとあがる土煙の中から間抜けな声が聞こえてくる。
「……信っじらんねぇ……ここら辺の土壌はシラスだから崩れやすいっつうのに……」
「先に言えよ」
「待てって言ったじゃねぇか!!」
「うお〜い……敵じゃねぇと信じていいかぁ〜?」
「おぉ〜…悪ぃ……」
土煙の中から聞こえた声にキャラはギクリと体を強張らせた。