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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-116

「………よしっ」
覚悟を決めて短く呼気を吐き出すと、エリックは光源のある通路へと飛び出した。飛び出し様に素早く、手前に居た一体の小型無人機に銃弾を撃ち込む。目がくらまない程度に灯したガンライトに、飛び出してきた襲撃者に反応する小型無人機が照らし出される。
ディスプレイのついた何かの装置を運んでいる、武装していない小型無人機が一機。その向こうには、三体。装置の手前に居る小型無人機二体の内一体は既に沈黙。どうやら弱点はそのままになっていたようだ。
エリックは続いて、銃身を向けてきた手前の小型無人機に銃を向けて引き金を引き。そのまま走りこんで、装置を盾にして向こう側にいる三体の斜線を塞ぐ。その際、四脚メカの銃弾が装置に直撃したようだが、構っている場合ではない。
一瞬。ディスプレイに何かが映っているように見えたが、今はそんな事も気にしていられる状況ではなく。すぐさま装置の陰から飛び出して、最も手近な小型無人機をしとめた。それとほぼ同時に襲ってくる銃弾を倒れこむようにして避けながら照準を合わせ、続けざまにもう一体を沈黙させる。
 残った最後の一体が銃口を自分に向けているのを、倒れこんだエリックは認識。この体勢でかわす事はまず不可能と一瞬で判断する。
咄嗟に心臓を守るように、銃を構えて突き出した右手に左手を添える。
 ほぼ同時に、銃声。
煙を噴いて無人機が沈黙するのと同時に、エリックの左腕に熱が生まれる。
「ぐぅぅうう……っ!」
 左の肘から二の腕にかけて、銃弾が潜り込んだのだ。連射の始まらない内に仕留められたから良いものの、一歩間違えて腕を貫通したりしていれば危ないところだった。
 無事をありがたがる間もなく、エリックは光源のついた物体を運んでいた非武装小型無人機を撃ち抜き、破壊する。そのまま警戒を緩めず、五感で辺りの気配を探った。
「…………」
 動くものは、エリック以外になかった。
「……く…………ふっ…ぅ…っ!」
 安堵した途端に左腕の灼熱は明確な痛みを伴い、エリックに傷の存在を強く訴え始めた。腕に目を遣れば、銃創は深く。放っておけば失血死というレベルのものだった。骨でも砕かれたか左腕はだらりと垂れ下がり、もしかすると一生片腕になるかもしれない。
襲ってくる痛みに震える右手でポケットに入れておいたバンダナを取り出し、エリックは右手と口を使って左腕をきつく縛り上げた。続いて、左腕の袖を破って傷口を塞ぐように巻く。ベルゼビュールになら処置セットもあるのだが、今出来るのはこのくらいである。早く戻って処置したいのは山々だが、今はまず目の前にある装置を確かめなければならない。
「……結局、これはなんだ…?」
 エリックは額に脂汗を浮かべながらも、今や運び手を失って横たわるだけとなった装置をしげしげと眺め、光源のディスプレイと思しきものがある方へと回った。四角いディスプレイは変わらずに明かりを放ち…………と、そこでエリックは気付く。それは、ディスプレイなどではなく、装置の中を覗き込む為の覗き窓のようなものなのだと。光は、中から漏れていたのだ。
 まるで棺おけのようなその装置に、エリックは見覚えがある。クリスの眠るCS装置に、良く似ているのだ。
外見の通り、CS装置なのかも知れない。そう思ったエリックは、装置の中を覗き込もうと覗き窓に顔を寄せる。頬が冷気を感じた途端、中に横たわる者が見えた。
「…………子供……?」
 呟くエリックの言葉通りに。CS装置の中には一人の子供が白い布にその身を包み、眠るようにその身を凍らせていた。


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