野生の悪魔が現れたっB-2
「ストラップ見てない? 黒くて……四角いやつ」
テキトーな事を訊き、同時に辺りを窺っている。
そうやって、彼女が一人で登校してきたのかどうかを確認しているのだ。
「あ……見てないと思うけど……」
申し訳無さそうな彼女だが、しかししっかりと見てしまっていた。
彼の目を。
――お前は俺の性奴隷だ。
「…………はい、ご主人様」
「お前は催眠が解けても俺の命令に背くことは出来ない」
「はい、ご主人様」
――魂を浄化せん。
そして彼女は自身の変化に気付くことなく、ふっと意識を取り戻す。
「そか。ありがと」
修一は何事もなかったかのように言い、また訳もなく自分の下駄箱の中をガサガサし始めた。
「へ? あ……」
女生徒は若干の違和感を覚えるも、しかしその正体が解らずに教室へ向かう。
こうして修一は、一人で登校してきたクラスメートに片っ端から毒を盛っていくのだった。
「君? 何処行くの?」
屋上へ向かおうとした修一は、階段を上ろうとしたその瞬間に声を掛けられ冷や汗を噴き出しそうになった。
「ん? 片桐君?」
修一はやむなく振り返り、二階へ上りきった優子が険しい顔を浮かべている事を知る。
「もう直ぐ授業、始まるわよ?」
「いや、あの……」
取り敢えず茶を濁そうとした修一だったが、いずれ催眠を掛けようと思っていた事を思い出し、優子の視線に視線を合わせた。
――お前は俺の性奴隷だ。
「……はい、ご主人様」
たまらず彼は口角を歪めてしまう。
「お前は催眠が解けても俺の命令に背くことは出来ない」
「はい、ご主人様」
――魂を浄化せん。
優子が自我を取り戻す。
しかしその心には新たな常識を刻まれているのだった。
「俺の邪魔をするな」
「ふぅん……はいはいっ……」
優子は肩を竦めてみせ、廊下を行こうとする。
しかしその態度が気に食わなかったのか、修一は彼女を呼び止めた。
「待て」
「ん? どうかした?」
「パンツ脱いで俺に渡せ」
「っ?! …………ッ」
目を見開く優子だったが、抗う事は出来ない。
彼の言うことには背けない……つまり、従うのが当然なのだ。
「あの……トイレで……」
優子は恥ずかしそうにしながらスカートの生地を握り締めている。