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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第二部』-6

第三話・新たなる接近
《変後暦四二三年十月十三日》


 朝。
エリックはさほど遅くも早くも無い時間に、三段寝台の一番下で目を覚ました。
鳥の声が聞こえる。ルームメイト…なんて洒落たものでもないが、彼らも起きていたり寝ていたり既に居なかったりと、様々だ。
「ん……くぅぅぅっ……っと。」
 エリックは思いっきり伸びをすると、手早く着替えてベッドを降りる。
今日も、朝食を摂って訓練の予定だ。他にする事も無い。
「朝飯朝飯……」
 支給されている配給食券を持って、エリックは食堂へと向かう。
と、廊下に出た所で珍しい人物を見つけた。
「あいつは……」
 エリックはその人物の名前を知らない。
エリックが見つけたのは、昨日トレーラーでやって来た男女の、男の方だ。
何故居るのかは知らないが、何かを探すようにきょろきょろと、辺りを見回している。
かなり不安そうで、かなりの美形である彼がそれをやっているとギャップがある。
「おい、どうしたんだ?」
 見兼ねたエリックが声をかけると、彼は振り向いてにっこり笑った。
さっきまでの不安そうな表情など、何処吹く風である。
「貴方ハアノ時ノ……オハヨウゴザイマス!」
 エリックは思わず固まる。
彼が喋ったのは、人の声ではないマシンボイスだったからだ。
コノ声デスカ?実ハ僕、事故ニ会ッテ喉ガヤラレチャッテ……」
 困ったものですと言わんばかりに、あっけらかんと彼は頭を掻く。
「そ、そうか……それで、お前は此処で何をしてるんだ?」
 まだ少し戸惑いながらも、エリックは当初の質問をぶつける。
「アア、ソレナンデスケド、アリシア……昨日僕ト一緒ニ居タ女ノ人ヲ見ミマセンデシタカ?ハグレチャッテ……」
 再び不安げな表情になりながら、彼は言う。
ころころと変わる表情と美形顔とマシンボイスがミスマッチで、非常に……おかしい。
「ぷぷ……っと……すまん、見てない。」
 つい、笑ってしまった。
「アハハハ!……ソウデスカ……」
 エリックにつられてなのか笑った後で、いきなり沈む。情緒不安定なのかも知れない。
「困ッタナァ……ドウシヨウ……」
「……んで、何処に行く予定だったんだ?」
 涙目でオロオロする彼に苦笑しつつ、エリックは声を掛ける。
「エエト、食堂デス……博士ニ配給券ヲ貰ッタカラ、此処デ食ベヨウッテ……」
「それなら俺も行く所だ。連れてってやるから、付いてこいよ。」
 エリックは軽く手招きをし、食堂へと歩き出す。
「本当デスカ?アリガトウゴザイマス!…ア、デモ、アリシアガ……」
 一度喜んだ後で、また思い出したようにおろおろする。本当に忙しない。
「もしかしたら先に行ってるかもしれないだろ?」
「ア、ソレモソウデスネ。」
 一転して再び笑顔を作ると、彼は先を行くエリックについていく。
「そうだ……お前、名前は?俺はエリックだ。」
「僕デスカ?僕ノ名前ハ…アルファ、デス!」


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