野生の悪魔が現れたっA-3
あの屈辱を何倍にもして返せる力を、今の彼は持っている。
花梨には汚辱が相応しい……しかも、それを喜んで受け入れる変態にしてやる……修一はそんな念を込めた視線で花梨を睨み付ける。
思えば、麻里子は花梨の取り巻きの一人だ。
花梨への汚辱を思い付くまで、彼はもう一人の取り巻き……椎名愛理(しいなあいり)で楽しむことにした。
催眠術を使えば外堀を埋める必要などないが、花梨の場合、目を見つめるのが最大の難関となり得る。
いや、それ以前に修一の呼び掛けなど無視に値するかもしれない。
アイデアが浮かび次第、取り巻きを手駒にいつでも花梨を呼び出せるよう準備しておくのは確かに無難であった。
そして、遂にチャイムが鳴る。
席を立って礼をし、その足で愛理の元へ向かう……。
しかし、修一の足は止まった。
催眠の掛かった合図は
「はい、ご主人様」
という台詞であるため、今ここで催眠を掛けると愛理への視聴率が百パーセントに達するかもしれない。
修一は考える。
考えて考えて、思い付いた。
彼の足は向きを変え、たどり着いたのは
「市倉……」
の席だった。
「ん? 何?」
呼ばれた麻里子は、丁度教材を直したところらしい。
席に座ったまま修一の方を見上げている。
「椎名を教室から連れ出せ」
声を潜めて言う修一に
「どこに?」
と麻里子は詳細を促す。
「そうだな……取り敢えず屋上に……」
「うん。解った」
彼女は何の疑いもなく承諾し、愛理のもとへ向かう。
そして、二人は教室から出て行った。
修一はそろりと後を追い、屋上の扉が見えた所で
「椎名っ」
獲物を捕まえた。
「え? あれ? 片桐君?」
麻里子と一緒に振り返った愛理は修一の姿を確認し、不思議そうな表情を浮かべる。
そして無意識のうちに彼の顔……目を見ていた。
「何か用?」
訊いてくる愛理に近寄り、彼女の瞳が修一の目を捕らえる距離になる。
――お前は俺の性奴隷だ。
「片桐君……?」
――お前は俺の性奴隷だ。
「…………」
――お前は俺の性奴隷だ。
「はい、ご主人様」
途端、麻里子は小さな驚嘆を発した。
自我のある彼女には愛理が紡いだ台詞に納得がいかないのだ。
それを悟り、
「麻里子は先に行ってろ」
と修一は麻里子に指示を出す。