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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-24

第十二話・立ちはだかる者
《変後暦四二三年四月?日》


 「何だ!?」
 思わず驚いたエリックの前方に、ぬらりと巨大な影が立ちはだかる。
徐々に砂埃が収まって、影の全容が明らかになる。
それは、全長二十メートル程の、巨大二脚型ロボットだった。
ワーカーを大きくしたような黒色のボディに、黄色く光るモノアイがエリック達を睨みつけている。今はまだ行動を起こしていないが、いつ襲ってくるか、判ったものではない。
そしてその股下の向こうに見えるは、開いた大きなゲート。
多分あれが地上への扉なのだろう。
「くそ……もう少しって所で……!」
 相手の全長はこちらの約三倍。恐らくライフルで貫ける装甲はしていないだろう。
クリスならどうにかするかもしれないが、今彼女は戦闘不能。
さらにエリックも、戦闘が出来る状態では無い。
絶体絶命。というやつだ。
「……お願い…降ろして……一人なら…逃げられるかも……」
 クリスのその声を聞いた瞬間。逆にエリックの中で覚悟が決まった。
「置いてなんかいけるか!こうなったら一蓮托生、地獄の底まで付いてきて貰うぜ!……うおおぉぉぉおおおお!!」
 エリックは雄叫びを上げると、なんとまっすぐに巨大ロボットへと突っ込んでいく。
片肩にミネルグを担ぎ、空いた片手に持ったライフルを連発しながら。
予想通りライフルはいとも簡単に装甲に弾かれ、巨大ロボットは手に持った銃をペール?へと向けた。
やはり無謀だったか。そんな思いがエリックの脳裏によぎるが、足は止めない。
こうなったらひたすらに突進するしか、エリックに道は無いのである。
そしてペール?に照準を合わせた巨大ロボットが、引き金を引く。
気分が高揚しているからか、死に対する恐怖は無かった。
ただ、クリスを守れなかったという悔しさだけが、こみ上げる。
そして……
爆発音。
やられた。エリックはそう思った。
しかし、ペール?は未だに走り続けている。震動が、それを伝えて来た。
「……?」
恐る恐る閉じた目を開くと、巨大ロボットの片腕が吹き飛んでいた。
そしてペールは無傷なままである。
「……これは………」
半ば呆然としながら、エリックが呟く。ペール?の足が、止まっていた。
「…暴発ね……」
クリスが、呟くように教える。
よく考えればここに居るロボット達の銃は、ずっと手入れされていなかったのだ。
何故今まで暴発しなかったかが不思議なくらいである。
「そうか……この期に及んで、まだこんなツキがあったとはな……いけるぞ!」


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