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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-22

第十一話・迫るもの
 《変後暦四二三年四月?日》


 「はぁ…はぁ…あともう少しね……」
「そうか……って、大丈夫か?」
 あれからまた三十分弱。疲労の色が濃いクリスに、エリックが聞く。
再び激戦を潜り抜けて来た事に加え、道は更に入り組んで思うように進めなかったのだ。
崩れたビルを登って行く事も出来るが、その間は隙だらけだ。
或いはクリスならそれでもなんとか出来るかも知れないが、エリックには無理だ。
自分が荷物になっている事を、エリックは実感している。
それだけに、何か力になれる事があれば協力したいのだ。
「…大丈夫よ。」
 だが、クリスは強い。エリックの助けなど必要無いのだろう。
そう思うと、エリックは少し辛かった。
劣等感。忘れかけていたこの感覚が、エリックの中に黒く染み出し始めていた。
「足手まといだよな…俺……」
 ネガティブな思考が口調に表れ、やや卑屈になってしまった。
「大丈夫だってば。そんな事より、早く脱出し…!!」
 そこで、クリスの言葉が切れる。
突然両隣のビルから、二足ロボットが飛び出して来たのだ。
その数、四機。
「下がってて!!」
 クリスはエリックに指示すると、素早くマシンガンを構える。
しかしその言葉が、エリックの劣等感に火をつけた。
「俺だってやれる!今回はお前が休んでろ!」
 エリックは一声吼えると、飛び出してライフルを構える。
そのまま飛び込んだ先にいる敵機に狙いをつけ、撃つ。撃つ。撃つ。
一発外れたが残りのニ発が敵機を捉え、沈黙させる。
「どうだ!」
「馬鹿!油断しないで!!」
 既に一機倒していたクリスが、ペール?に走り寄りながら諫める。
気付けば、エリックは他の二機に挟まれていた。
「…う……!?」
 急に頭が冷え、エリックは呻く。
だがもう遅い。完全に、狙いを付けられている。
走り寄るミネルグが早業で一体を撃破するが、もう一体はどうしようもない。
エリックは死を覚悟した。
その瞬間。
「撃ちなさい!!」
 クリスの声が聞こえたかと思うと、横に急激なGが掛かり、弾き飛ばされる。
そして、爆発音。ペール?に損傷は無い。
何がなんだかも判らないまま、エリックはクリスに言われた通り、横倒しになったままのペール?にライフルを構えさせ、トリガーを引く。
一発で、敵機に命中。そのまま膝を着き、敵機は動かなくなる。
「やったのか…?」
訝しがりながらもペール?を立ち上がらせ、エリックは確認する。敵は動かない。
「よし!やったぞ、クリス……!?」
 歓喜の叫びと共にミネルグへと向き直ったエリックは、そこでようやく事情を理解した。
彼が見たのは、黒煙を上げて倒れるミネルグ。傍には、銃と盾が転がっていた。
つまりさっきは、走り寄った勢いのままにミネルグがペール?にぶちかましをかけ、そのおかげでエリックは助かったようだ。
しかしミネルグは、やや小型とはいえ爆発武器の直撃を喰らったのだ。
無事で済む筈が無い。
「クリス!クリス!おい!返事をしろ!」
 ペール?をミネルグに付けさせ、エリックは通信で呼び掛ける。
ミネルグは白銀の装甲が見る影も無く煤け、直撃を受けた場所はべこりと凹んでいた。


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