野生の悪魔が現れたっ@-1
「なんじゃこりゃ……」
片桐修一(かたぎりしゅういち)はそう言わずにはいられなかった。
学校から帰ってきてみれば、見知らぬ幼女が玄関に背を向けぽつんと立っていたのだから。
「おぉっ、来よった来よった」
幼女は長い赤髪を翻しこの部屋の主の姿を黒い瞳に捕らえると、ニヒヒッと憎たらしくもどこか妖艶な笑みを口の端に浮かべる。
「……誰?」
修一の質問は至極当然のものだ。
自分の部屋に見知らぬ幼女が居るだけでも不可解極まりないのに、その幼女ときたら髪は赤く、下着姿に近い恰好で、しかも土足。
一見コスプレ大好き少女かとも思う修一だったが、いずれにしても何処の誰が何故此処に居るのか解ってから警察に突き出すかどうかを判断しても遅くはないだろうと考えた。
「うちはクラン=フレス=ミーティグレー=ラ=ストゥールや」
「……ん?」
「せやから、クラン=フレス=ミーティグレー=ラ=ストゥールやて」
「……え?」
「……クランでええわ」
クランと名乗る幼女は諦めの溜め息を吐く。
一方の修一は
「ふぅん」
と無関心な声を洩らし、次にコスプレ少女に冷めた目線を遣りながらテンプレの如く質問を投げ掛ける。
「んで? 他人(ひと)んちで何やってんだ?」
「何言うとんねん。修一が封印解いたんやないかい」
「……は? 封印?」
クランの返答に修一は疑問符を浮かべるもそれは一瞬の事で、直ぐに彼女を警察に突き出そうという結論に辿り着いた。しかし、
「ほら、押し入れのお札をペリッと剥がしたやろ?」
と言われ、
「あれお札だったのかよ……」
と独り言のように呟いた。
「くそっ。あのババア、曰く付きとか聞いてねーぞっ」
大家の顔を思い浮かべながら修一は文句をつらつらと吐き捨てる。
だがそんな彼を余所にクランは
「そんで? 望みはなんや?」
マイペースに話を進めていく。
「望み? 何? 何か叶えてくれるのか?」
「うん。その代わり魂をもらうんやけどな」
「魂?」
いよいよ訳が解らなくなってきた修一に対して、クランは大きく溜め息を吐いた後腕を組んだ。
「ええか? うちは悪魔なんや。せやから魂を天界に導くのが仕事なんやな。んで、うちの封印を解いたあんたはうちと契約を結ぶ権利を持ってんねん」
「はあ」
「せやから望みを言えっちゅーてんねや」
「急に言われてもな……」