野生の悪魔が現れたっ@-12
実は彼女もミルルの多くを理解していない。
修一はその理由をもう少し後で知ることになるのであった。
***
その頃、ある場所で、彼女は一人の女の子を見つめていた。
蒼い瞳を閉じ、心に響いてくる声を聞いているのだ。
その声は
「片桐くん……片桐くん……」
と囁き続けている。
しかし女の子の口は動いてはいなかった。
女の子は五円玉のような物に紐を通し、その物体に手を翳している。
そして念じていた。
ただひたすらに、彼の名を。
(澪が感じている……)
彼女は悟り、セピアの向こうにいる女の子……水前寺澪(すいぜんじみお)の手に手を重ねる。
だが触れることは出来ず、すり抜ける。
しかし気にせず、澪が手を翳している物へ僅かながらの念を送った。
「魂を浄化せん……」
呟くと、彼女は手を離した。
「片桐……」
彼女にはそれが誰か解らない。
しかし澪が何かを感じているということは、おそらく片桐という人物に何かが起こっているのだろう……それは解るのだった。
「少し調べてみるか……」
彼女は再び目蓋を閉じ、澪の声に神経を研ぎ澄ませる。
片桐という人物の情報を得るために……。