第五話:バレーボール部の綾香-1
私立高校のバレーボール部の綾香には、小学校時代からの親友の男子がいた。
背が高く、成績が抜群で、女子の皆から人気のある男子だった。
同じ高校に入ったのに、最近は、ほとんど学校に姿を見せていなかった。
綾香は、優しい両親から、彼が家庭内で時々暴力を振るうと、悩みを打ち明けられた。
一日中、自分の部屋に閉じこもって、インターネットをアクセスしたり、
ビデオを見ているらしい。
綾香は、学校が早く終わった日に、帰り道の途中にある彼の家の前で、母親と出合った。
母親は、親友の綾香を、嬉しそうに笑顔で迎え、家の中に誘った。
紅茶と、ケーキを用意してくれた母親は、二階に向かって、達也を呼んできた。
母親にも、会話を拒んでいた達也が、綾香の訪問を聞いて、部屋から出てきたようだ。
母親は、達也の行動に驚き、そして嬉しかったのだろうか、うっすら涙を浮かべていた。
二人きりにしようと気を使ったのか、母親は買い物に出かけた。
家には、二人だけが残された。
「 何しにきたんだ? 」
「 家の前で、お母さんに誘われて、、、それだけ 」
小学校の時と同じ達也の話し方が、綾香を安心させた。
学校の先生や同級生が、達也のことを悪く言っていても、
綾香は、いつも達也の味方になろうと思っている。
学校に来なくても、引きこもっていても、綾香は達也の味方になろうと思っている。
「 学校のことか ? 」
「 綾香は、達也がいやなら学校に来なくてもいいって思ってるよ 」
「 ・・・ 」
「 達也らしくしていれば、綾香は、それで好きよ 」
達也は、皆が責める事を、口にしない綾香の心を、感じ取った。
「 綾香らしいな、、」
「 達也の部屋を見せて ! 」
しばらく、沈黙していた達也は、
「 いいよ、 来いよ 」
達也は、家族の誰も中に入れない自分の部屋に、綾香を誘った。
達也は小学生の時のように、綾香に手を差し伸べ、綾香の手を握った。
綾香は、達也に手を引かれて、二階にある達也の部屋に入った。
部屋の中は、想像したとおりに、ごみ一つ無く綺麗に整頓されていた。
二部屋続きの、ベッドルームもホテルのように清潔であった。
レースのカーテンが掛かった窓際には、熱帯魚の水槽があった。
水槽の内には、蛍光灯の明かりに照らし出された無数のネオンテトラだけがが泳いでいた。
「 達也は、ネオンテトラが好きなんだね 」
「 こいつは、こんなに小さいくせに、絶対群れないんだ、
いつも、水槽全体に広がって、自由に泳いでいるんだ 」
「 なんか、威張ってるみたい 」
「 俺は、なにも威張ってないよ !」
達也は、怒ったように綾香に話しかけた。
「 達也じゃ無いよ! ネオンテトラだよ 」
「 ははは、そうか、、、」
達也は、久しぶりに声を上げて笑った自分を、おかしく思った。
綾香は、水槽に吸いつけられるように、水槽の中の熱帯魚の動きを見つめていた。
背中にぴったり達也の胸が押し付けられるのを感じると、
大きな両手で、後ろから抱きしめられた。
しばらく抱かれたままの綾香は、静かに振り向き、達也の唇を吸った。
自分でも驚くほどの力で、唇を吸い、そして達也の首を抱きしめた。
綾香は、達也を隣のベッドルームに誘った。
ベッドの中にもぐりこんだ綾香は、衣服を脱ぎ、達也に投げつけた。
自分でも驚くほど大胆な行動に、綾香は驚いた。
呆然と立ちすくんでいた達也は、綾香に誘われるままベッドに入ってきた。
今まで、鬱積してきた少年の精力は、想像を絶していた。
心の束縛から解放された肉体は、ほとばしる精液を柔らかい綾香の体内に注ぎ込んだ。
誘った綾香だったが、達也の腕力と体力に翻弄されるまま、
何度も何度も絶頂の快楽に導かれた。
次の日、達也の家の前を通り過ぎると、
いつもの通学路に、真新しい学校かばんを肩にかけた達也の背中が見えた。
綾香は、喜びの衝撃に打たれた。
すぐに、大股の全力で走り出し、達也に追いつき、大きな背中をたたいた。
「 学校にきたね 」
「 走る足音で、綾香と分かったよ 」
綾香は、微笑みながら、大きな達也に身を寄せるように一緒に歩き出した。
同級生の男子生徒が、そんな二人をはやしながら追い抜いていった。
二人が校門をくぐり、綾香は達也と別れるときに、
「 今日は、一緒に帰ろうね 」
晴れやかな声で、達也に話しかけた。
達也は、綾香の眼に微笑みながら、コクンとうなずいた。
綾香は、達也が明日も学校に来ることを確信した。
世界が急に広く、そして明るくなった感じがした。
そして、跳ねるように小走りで教室に向かった。
完