「遠い隔たりと信じられない近さ」-21
「…そうだよね。理屈なんかなくたって、ぼくがアイコさんと知り合えたのは本当だから」
物心ついた頃から望んでいた“友だち”という存在。それが、このような形とはいえ叶う日がくることになろうとは。
「へ、返事をかかなきゃ」
晶はアイコ宛の手紙を図書カード入れに収めた。
それらを終えると、朝からの疲れが出たのか眠ってしまった。
優しい寝顔をしていた。
勉強を終えたアイコは、届いた手紙に目を通していた。
『アイコさんへ。
アイコさんの言うとおり、仕組みなんてどうでもいいんだね。
ぼくも気にしない。
それから、ぼくのことは“アキ”にしてくれる?ぼくもアイコさんのことは“アイさんにするから。
また手紙下さい』
(アイさんかあ…)
見つめる目が、笑っていた。
お互いを“アキとアイ”と呼ぶようになった晶とアイコ。
常識では考えられない状況下で出逢った2人は、頻繁に手紙をやり取りするようになった。
それはまるで、会話を交わすように。
『アイさんは、1日なにしてんの?』
『わたし?わたしは朝6時に起きて、お母さん逹の手伝いと朝の支度して7時半には家を出るの』
『学校に行くの?』
『そうよ。夕方までは学校で勉強して、それからは子供逹の世話と、お母さん逹の手伝いをやるの』
『1日が忙しいんだね』
『忙しいけど、もう慣れちゃった。それに、子供逹もかわいいし』
『アイさんは、のんびり出来ないの?』
『のんびりは出来ないな。それに、今は受験があるから』
『受験ってなに?』
『高校受験。あと2ヶ月で、高校に入るためのテストがあって、それに合格しないと高校に行けないのよ』
『へえ、そんなシステムになってんの?でも、アイさんは大丈夫だよね』