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「遠い隔たりと信じられない近さ」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「遠い隔たりと信じられない近さ」-15

「もしかして…矢野さんが」

 矢野なら、この病室を自由に往き来できるし、晶が手紙を書くつもりなのも知っている。
 そう考えれば、晶が手紙を本に挟むのを、またまた見かけても不自然じゃない。

 おそらくそうだろう。晶の中で、推考は確信に変わった。

「ぼくも、返事を書かなきゃ」

 矢野の気遣いを知った晶は、嬉しかった。
 此処に入院してからは、母親よりも長い月日を一緒にいてくれていた。
 だからこそ、少しの間だけでも付き合ってあげようと書き入れてくれたんだろう。

(明日の昼には、お母さんが来るからそれまでは…)

 晶は新しい紙に矢野への返事を書き、丁寧に畳んで図書カードにしまい込んだ。





「う…うん…」

 謎の返事を受け取った翌朝、少女は片岡の部屋で眠っていた。
 オカルトめいた出来事を目の当たりにして、頭が混乱して熱を出した。
 ただ、子供逹に染る病気では大変ということで、2階の部屋に寝かされたのだ。

「うん…?」

 目を覚ますと、いつもと違う景色。

「何処?ここ」

 寝ぼけ眼で部屋を見渡しながら、ようやく自分のいる場所がどこだか把握する。

「そっか…今朝、熱が出て」

 枕元にある目覚まし時計は、10時を指していた。

「こんな時刻まで寝てるなんて、いつ以来だろ?」

 中学1年生の頃から片岡逹を手伝って、休日でも遅くまで寝てるなんてなかった。

 少女は寝ていた布団を畳み、軽く伸びをしてから階下へ降りていった。

「おはよう…ございます」

 職員室には、片岡ともう1人の職員がいた。

「おはよう。熱は?もういいの」

 心配気な片岡に少女は、少し恥ずかしそうに笑うと、

「心配かけてごめんなさい!もう大丈夫です」

 深々と頭を下げた。
 元気そうな姿に、片岡逹は安堵の表情を見せた。

「遅くまで勉強してるから、疲れが出たのよ。ごはん食べたら、夕方まで寝てなさい」
「もう大丈夫だから。わたしにも、何か手伝わせて」
「だめよ!明日からのことを考えて、今日は休みなさい」

 少女は、迷惑かけた分を取り返したいのだが、片岡は頑として認めない。
 結局、また片岡の部屋に戻ることになった。

「じゃあ、夕方まで勉強してるから」
「そうなさい」



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