カウントダウン-16
「ああ〜!くそっ……あの野郎!!覚えてろよっ!!ケイ!魔法の基礎を教えてやる!言っておくが俺の指導は厳しいぞ!!」
「お、おう!!耐えてやろうじゃねぇか!」
短時間で叩き込んでやる、という八つ当たりのようなアースに、好奇心で満々のケイは元気よく返事をした。
目が覚めたら既にエンは居らず、代わりにアビィが横ですぴすぴ寝息を立てていた。
大分体力も魔力も回復したキャラはベットから降りて服を着る。
戦いになるだろうと、厚手の黒いタイツにロングブーツ、薄手の黒い長袖シャツの上に革製のノースリーブワンピース型のアーマーを着て、ナイフなどを大量に収納した太いベルトを腰に巻く。
コンコン
髪を結ぼうとしていたキャラは、ドアを叩く音に動きを止めて返事をした。
「はい。開いてますよ」
ドアを開けて入ってきたのはサイラ国のイズミ姫。
かなり意外な人物にキャラは目を丸くする。
「もう大丈夫なの?」
いつもよりくだけた口調で声をかけるイズミにキャラはソファーを勧めて答えた。
「はい。ご心配おかけしました」
心配されるほど仲は良くないのにいったい何事か、と思いつつもお茶をいれる。
「広間の方はどうなってますか?」
「どうもこうもないわよ。誰が指揮を取るかで大揉めよ」
ファンは守備に長けているが攻撃は苦手という事で、サイラが指揮をとろうと名乗り出た。
それに待ったをかけたのが、カイザスとゼビア。
全大陸の主要国ファンを守るために協力はするが、自分達の兵士を無駄死にさせたくない、と反論してきた。
「それじゃ何か?儂がお主らの兵士を盾にすると思っておるのか?!…ってお父様が怒っちゃってね……そこから揉め続けてるわ」
喧嘩してる場合じゃないのにねぇ、とイズミはため息をついてキャラのいれてくれたお茶を飲む。
「そうですか……」
キャラは親指の爪を噛んで考えこんだ。
ラインハルトもオーウェンも協力してもらう側として口出しが出来ないのだろう……という事は、この王様達にはご退場願いたいが、兵士は借りたい……とくると最善の方法は……。
考えがまとまったキャラはニヤリと笑ってイズミに向く。
「オレ……じゃなくて私はもう行きますが、イズミ姫は避難場所に行きますよね?ご案内しますよ」
お姫様がいつまでも危険な場所にいるのは感心しない、とキャラは言ってイズミに手を出した。
「いえ、ちょっとお願いがあるのよ……もう少し動き易そうな服を貸してくれないかしら?」
「服……ですか?」
確かにドレスのままじゃ窮屈だろうが、楽に着れる服ぐらい持って来ているはずだ。
「緊急事態ですもの。わたくしも働かなくてはね。こう見えても看護師資格を持ってるのよ?医務室でお手伝いするために服を貸してちょうだい」
簡単な服と言ってもお姫様の服しか持って来ていない。
基本的に長く裾を引きずる形なのではっきり言って邪魔。