カウントダウン-12
「あんたのそこにイルカ型の精霊が居るみたいなんだよな」
「は?精霊?」
イルカは嬉しそうに前ヒレを打ち合わせる。
「面白そうな話だな、仲間に入れてくれ」
ゲイッシュがケイの反対側に座った。
「アース、精霊見えるのか?」
「今はな。多分、左目は魔獣だからだと思う」
アースは自分が魔獣と人間のハーフで、右目が潰れたせいで左目に力が集中しているのだろうと話す。
「普通に精霊見えるのはキアルリアしかいねぇんじゃねぇかな」
アースの言葉にゲイッシュが手を挙げて発言した。
「さっきから気になっていたんだが……なんでうちの姫様呼び捨てなんだよ?」
「恋人だから」
あっさり答えたアースに2人は度肝を抜かれる。
「その話は今は置いといてだ……多分、水の精霊なんだろうな、今までそいつがあんたのサポートをしてたんだろうと思う」
赤ちゃんの時から教えてもいないのに泳げたのも、魚の群れの位置を的確に当てる事ができたのも精霊のサポートがあったからだったのか、とケイは納得した。
「10人抜きバトルで俺がドラゴンに乗ったろ?あれは火の精霊で俺の親友にくっついてるアビィ」
精霊の魂に刻みこまれている名前を喚べばその精霊と契約できるが……代償に魔力以外に何を払うかはわかっていない、とアースは説明する。
「って事は……俺って魔力持ち?」
「みたいだな」
ファンで魔力持ちが産まれるのはかなり珍しい。
ミヤ、キャラに続いて、多分3人目。
「うおおぉぉっ!!スゲー!!俺、スゲェー!!」
1人盛り上がるケイを無視したゲイッシュはこっそりアースに聞いた。
「精霊がくっついてるって……呪われてるとかと同じか?」
ゲイッシュの失礼な言葉に、怒ったイルカが頭にカプリと噛みつく。
「うおっ!?突然頭痛が?!」
「コラコラ、しょうがねぇだろ?ファンの人間は魔法に馴れてねぇんだから迷信深いんだよ」
ゲイッシュの頭に向かって話かけるアースにケイはバッと振り向いた。
「そこにいるのか?!」
「ああ、叔父さんに噛みついてる」
「うおおぉっ離してくれぇ〜俺が悪かったぁ〜」
頭を抱えて悶えるゲイッシュを押さえつけたケイは、頭上に向かって話かける。
「今まで助けてくれてありがとうな!!出来ればずっと俺と一緒に居てくれよ!!契約でもなんでもするから!!」
ケイの言葉に喜んだイルカはゲイッシュから離れてケイと額を合わせた。
「!!クイン?!」
頭の中に流れてきたイメージをそのまま口に出したケイの目の前がパアッと光る。
光がおさまると、50センチぐらいの大きさの白いイルカが空中に浮かんで目をキラキラさせていた。