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トシシタノオトコノコ
【OL/お姉さん 官能小説】

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チャリンコに乗ったオウジサマ-4

家に帰って、メールをしようと思ったけれど時計を見て考える。もし夜勤だとしたらまだ寝てるんじゃないか、とか。考えてみたら陽人くんのこと、ほとんど何も知らない。とりあえず時間になったらコンビニに行ってみよう。もしいなかったらメールをしよう。食事はその時に買うとして、ネットで引越し業者を探して見積依頼する。動きやすい格好に着替えて新居に持っていくもの、持っていかないものの選別を始める。売れそうなものは売る。処分するものは処分する。一軒家から2LDKのマンションに移るのだ。収納だって限られるだろうし。あまりの即決っぷりに担当してくれた知人は驚いていたけれど、善は急げ、だ。そのきっかけをくれた人の笑顔を思い浮かべて時計を見ると日付が変わる寸前だった。慌てて作業を中断して普段着のままダウンを羽織って外に出る。

「いらっしゃいませー」

いつもの声にホッとする。レジの中にいた陽人くんと目があった。一瞬驚いたような表情をしたものの、すぐにいつもの笑顔に戻る。他に店員さんもいるし、お客さんもいるしさすがにここで話はできないけれど、夕飯と呼ぶには遅すぎる買い物とビールをカゴに入れてタイミングを見計らい陽人くんが立つレジの前へ。

「157番ひとつ」

「はい」

元気よく返事をしてくれていつもの煙草を用意してくれる。

「帰り、気をつけてくださいね」

「ありがと」

店を出て陽人くんにメールをする。休憩時間か仕事が終わったあとに読んでくれたらいいなと思いながら。

『お仕事お疲れ様。昨日のお返事をしたいのですが、都合のいい日を教えてもらえますか?』

家に帰りお弁当を食べてまた作業に取りかかった。なんて返事が帰ってくるか怖くて何かしていないと不安で。作業を再開してすぐに携帯が鳴る。新着のメールは陽人くんから。

『夜分遅くにすみません。今休憩入りました。冬子さんが買い物に来てくれてすごく嬉しかったです。明日の朝、仕事終わってから会ってもらえませんか?』

『了解。コンビニのそばのファミレスで待ってます。仕事終わったら連絡くれる?一緒に朝ごはん食べよ?』

『喜んで!』

『じゃぁ、しっかり休憩してお仕事頑張ってね。私ももう少し作業するから一緒に頑張ろう』

『自宅でお仕事ですか?』

『ううん、プライベートだけど。内容は明日話すね』

『わかりました。あんまり無理しないでくださいね。また明日』

携帯を閉じると再び作業に取り掛かる。自分でも驚くほど現金だ。作業のスピードが確実に上がるなんて。それでももう徹夜できるほど若くないから、まだ頑張って働いているであろう陽人くんには申し訳ないけれど適当なところで切り上げ、お風呂に入り眠りについた。

*****************

翌朝。目覚ましがなるより早く眼が覚めた。ゆっくりと支度をする。服装は普段よりもかなりラフだ。待ち合わせをしたファミレスへ向かい、着く寸前で陽人くんから着信。今終わって急いで向かうというから、中に入らず入り口のそばで陽人くんの到着を待つ。猛スピードで走って来る陽人くんを見つけると、頬が緩むのがわかる。

「すみません、お待たせしました。寒くなかったですか?」

「大丈夫よ。それより仕事終わったばかりなのに急がせちゃってごめんね。疲れてない?」

「大丈夫ですよ。じゃぁ入りましょう?オレ、腹減っちゃって」

そう笑ってドアを開け、私を店内へと誘導してくれる。店員さんに禁煙か喫煙か聞かれ、喫煙と答えてくれた。

「陽人くん煙草吸うの?」

席についてそう尋ねると吸わないという。あぁやっぱりこういう気遣いが出来るコなんだな。お腹が空いているという陽人くんとメニューを選んでオーダーする。ドリンクバーから飲み物をとってきて一息つく。切り出すタイミングって難しい。

「冬子さん、もしかして緊張してます?」

そ、そりゃ緊張もしますよ。いろいろプライドとかも邪魔してますよ。でも言わなきゃ。伝えなきゃって思えば思うほど、陽人くんが眩しくて真っ直ぐに見れない。素直にならなきゃ。

「あ、あのね。引越ししようと思うの」

あぁ、何て脈略のない唐突な切り出し方しちゃったんだろう。返事をするのが先じゃないの?

「はい?引越し、ですか?」

ほら、陽人くんだって話が見えないんですけど的な表情で困っちゃってるじゃない。

「う、うん。あの家売る決心着いたの。で、駅前のマンション借りてそこで暮らすことにしたの」

「じゃぁ、もう店に来てくれなくなっちゃうんですね。寂しいな」

あ…本当に悲しそうな顔しないで。

「で、でもね。付き合ってたらお店じゃなくても会えるでしょ?」

私ってば本当に情けない。

「そ、それって…」

「あ、あのね。もしよかったら…付き合ってください」

鏡見なくたってわかる。顔がものすごく熱い。

「もちろんです。超嬉しい。オレ、今冬子さんのことめちゃくちゃ抱きしめたいくらい嬉しいです」

満面の笑みを浮かべた陽人くんをようやく見つめることができた。

「冬子さん、食事終わったらこのままデートしてくれませんか?」

「私は平気だけど…陽人くん昨夜夜勤だったから寝てないでしょ?」

「1日くらい寝なくたって大丈夫です。冬子さんと一緒にいられるほうがいいです」

「でも身体によくないよ?」

ちょうど陽人くんが頼んだ焼鮭定食の大盛りと、私が頼んだハムエッグサンドが運ばれてきた。店員さんが去ってから陽人くんがテーブル越しに顔を近づけてくる。

「それなら、オレの部屋で一緒にまったりしてくれませんか?」

「え?あ…う、うん。いいよ」

うろたえる私と冷静な陽人くん。

「じゃぁ決定ですね。いただきます」

「そうだね、いただきます」


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