都会の光-3
空港に着き荷物を受け取り、東京に向かう準備をする。
大輔くんは携帯に着信があったらしく、掛け直している。
邪魔にならないよう少し離れたとこで待つ。
壁にもたれて、周りを見渡す。
ロビーにはたくさんの人がいる。
家族連れ、カップル、サラリーマン、外国人。
私の前をたくさんの人が通って行く。
大輔くんを見ると、目が合う。
右手を顔の前に立て謝ってるのがわかる。
笑顔で首を横に振る。
私も携帯を出し、確認する。
何もない。
携帯をカバンになおしながら自動ドアを見る。
何故かふと、理恵の言葉を思い出した。
『私が由梨の立場なら大輔くんに惚れるなぁ。』
ずっとお兄ちゃんだった。
学生の頃から優しくて、頼りにしてた。
仲良くなった頃、大輔くんには彼女がいたから、恋愛対象にはならなかった。
大輔くんも私は一番話しやすい女友達だし、妹みたいだって言ってた。
周りの友達からは付き合ってないの?って聞かれることも多々あった。
確かに飲んでそのまま泊まったりすることもあったけど、そんな関係になったことは1度もない。
私が聡と別れた時と同じように、大輔くんが彼女と別れた時もその後は一緒にいた。
でもその後付き合おうとかはならなかった。
惚れるとか惚れないとか考えたことなかった。
こんな風に一緒に旅行したら、やっぱり恋人に見えるのかな?
そもそも、大輔くんはよかったのかな?
考えていると、隣から声がした。
「ねえ、1人?誰か待ってるの?」
声の方を見ると男の人がいた。
細身で、サングラスっぽい眼鏡をかけた、ちょっと疲れた感じの人。
私の隣で同じように壁に寄りかかっている。
「はい、待ってますけど…」
答えると、その男の人は笑顔で言う。
「俺もなんだ。トイレから帰ったら連れがいなくてさ。」
「そうですか。」
どっかでみたことある気がするけど、よくわからない。
大輔くんはまだ電話中。
書類片手に話してるあたり、仕事かも。
ホント忙しい中来てもらって申し訳なくなる。
「連れはまだ?」
「え…?」
「君の待ってる人はまだ?」
その人が聞いて来る。
「多分、もう少しかかるんじゃないかと…」
「ふーん。じゃあどっちが早いか競争だね。俺ユウキ。君は?」
「は?」
思わず聞いてしまった。
ユウキくんとやらは、笑っている。
「君の名前だよ。」
「冴木です。」
「サエキ…なにちゃん?」
ちょっと困る。
よく知らないし…
疑うわけじゃないけど、どうしていいのかわからない。
大輔くんはまだ電話中。