都会の光-12
「今日なの?!」
「そうなんです。実は今日28歳になっちゃいました。」
「お、おめでとう、でもこんなことしてる場合じゃないよ!」
そう言って高橋さんはカップを持って立ち上がり、また奥にいってしまった。
どうしていいのかわからず、とりあえず携帯をチェックすると、メールが2件入ってる。
最初のメールは理恵だった。
もう一つを確認すると、大輔くん。
2分前に送られてきてる。
"どこにいるんだ?"
高橋さんにばったり会って、事務所でお茶をいただいた旨をメールで返信した直後、さっき高橋さんが入って行った奥の扉が開き、高橋さんが出てきた。
コートとマフラー、ボストンバッグを持って電話しながらこっちに近づいてくる。
「じゃあ、店で。連絡頼むぞ。」
そう言うと、高橋さんが電話を切った。
目が合うと高橋さんがニヤリと笑う。
「よし、ゆりちゃん急ごう。」
そう言って高橋さんが椅子にかけていた私のコートを取り歩きだす。
慌てて後を追いかける。
「た、高橋さん!どこに行かれるんですか?」
「東京に戻ろう。里見くんも片桐と東京に向かうから。俺と一緒じゃ嫌かな?」
高橋さんは事務所の扉に鍵をかけ、さっき来た道と反対の方に歩き出す。
「嫌じゃないですけど…」
「嫌じゃないならついて来て。ちょっと寒いかもだからコート着てね。」
コートを渡され着込む。
高橋さんはエレベーターのボタンを押し、時間をチェックする。
「高橋さんも着られますか?カバン持ちますよ。」
私が言うと同時にエレベーターの扉が開く。
高橋さんは嬉しそうに笑ってエレベーターに乗り込む。
「俺は大丈夫。ゆりちゃん寒くない?」
「今は建物の中ですし、暖かいです。」
エレベーターが地下につく。
地下鉄で移動するのかと思ったら、どうやら駐車場みたいだ。
扉を開けると冷たい風が頬に刺さる。
思わず両手をにぎりしめ、歯を食い縛ってしまう。
「やっぱり、寒かったね。」
高橋さんはニヤリと笑うと、私にマフラーを巻いてくれた。
「高橋さんが寒そうですよ!大丈夫です。」
マフラーを取ろうとしたら、高橋さんに右手をつかまれた。
「大丈夫。車はすぐそこだから。急ごう。」
そのまま手をひかれ、車まで歩いていった。