都会の光-11
「ゆりちゃん、チョコケーキ食べたいの?」
突然背後から声がした。
高橋さんがおぼんを持って立っていた。
何でチョコケーキの話が出てきたのか、全然わからない。
「な、何でですか?」
私が尋ねると、高橋さんが向かいに座り、笑いながら答えてくれた。
「だって、大きなため息とつぶやきだったよ?チョコケーキ食べたくなったって。」
高橋さんがコーヒーと紅茶をテーブルにおく。
「好きな方どうぞ。あったまるよ。嫌いじゃないかな?」
「あ…ありがとうございます。コーヒーは飲めないので、紅茶いただきます。」
紅茶のカップを取ると、高橋さんがニコニコ笑いながらコーヒーを取る。
紅茶のいい香り。
あったかくて落ち着く。
「で、何でチョコケーキだったの?チョコ好き?」
高橋さんが切り出す。
一体どんだけ大きな独り言になってたのか…
考えると恥ずかしくなってきた。
「いえ、チョコは好きなんですけど、何となくです。ケーキ食べたいと思って、ケーキなら甘すぎないチョコがいいなって!」
「いいねぇ、俺もケーキならチョコケーキだな!うまいよなぁ。昔は生クリームとか食べれたけど、今結構きついんだよなぁ。俺先月33になったんだけどさ、その時に事務所で祝ってもらったんだけど、ケーキが激甘でさ。つらかったんだよなぁ。」
高橋さんの話に笑みがこぼれてしまう。
「先月ですか?おめでとうございます。お兄さんですね。」
「ありがとう。ゆりちゃん、ずっと気になってたんだけど、幾つなの?若いなぁと思ってはいるけど、どの位違うのかなぁと思って。」
「28になっちゃいました。」
「おぉ、5歳差かぁ!なったってことは夏生まれとか?」
「いえ、冬です。」
「じゃあ最近じゃん!まさか俺と同じ11月とか?」
「いえ、12月で…」
ここまできたら、もう言ってしまおうと思った。
「…実は今日が誕生日なんです。」
「は?!」
高橋さんの動きが止まる。
びっくりした顔で聞き返される。