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そんなこと言わないで
【同性愛♀ 官能小説】

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全一章-11

 ある日、友人二人を連れて牧子が訪ねてきました。
「三奈子、元気そうじゃないの。なんだか以前より綺麗になっちゃったね。もっとやつれてるかと思ったよ」
 牧子は弥生さんの手前も構わずそんな言い方をしました。
 佐知子さんも美香さんも、
「三奈子さんの噂を聞いて、舞衣ちゃんの介護は大変だと思っていたけど、生き生きしているわね。この調子なら舞衣ちゃんの調子もいいんじゃない? まだ会えないの?」
「ええ、まだちょっと。面会謝絶なんてことではないんですけど、精神的に今が一番大切だと思っているもんだから」
「そう・・・専門家に従うわ。じゃあ、舞衣ちゃんの好きなケーキ買ってきたから、後であげてね。食べ物に制限はないんでしょ」
 美香さんの手からケーキを受け取った弥生さんは涙を浮かべ、
「ほんと、三奈子さんのおかげよ。あのままだったら、あなたたちをこうしてお誘いすることもできなかったし、舞衣もどうなっていたか・・・」
「弥生、牧子さんが推薦した人だよ。大船に乗った気で見守っていてね」
 みんな舞衣ちゃんの不幸を気に掛けている様子が伝わってきました。私にしてみれば、この優しさが舞衣ちゃんの甘えを増長させたのだと言いたかったのですが、それは無理というものでしょう。
「近い内に歩けるようになると思うの。きっと皆さんに元気な舞衣ちゃんをご披露申し上げますので、今暫くお待ち下さいませ」
 みんなを安心させようと、少しおどけた物言いをすると、
「牧子、もっと早く三奈子さんを紹介して欲しかったよ。介護士にはもったいない可愛い人ね」と、舞衣ちゃんから私に話題が転じてしまいました。
「上背はあるのに、そんな細腕でワガママ舞衣ちゃんの介護は大変でしょ」
「ワガママ舞衣ちゃんなんて可哀想よ。あんな美人が酷い目にあったんだもの。いくら素直な子だって、正常じゃなくなるわよ」
「でも三奈子さんのおかげで、母親の私にも笑顔を見せるようになったのよ」
「弥生さんも旦那も、ちょっと舞衣ちゃんを可愛がり過ぎたのよ」
「でも、さすが牧子の・・・その、信頼するに足る人だったんだ。三奈子さんは」
「三奈子さんて誰かに似てない? ほら、女優で、なんとかって映画にでていた、顔のほそい無精髭のナントカって男優の恋人役の・・・」
「あんた、ナントカばっかりだね。かなり重傷の脳軟化だよ」
「年のせいだよ」
 弥生さんも含めて大笑いになり、慌ててみんな口を押さえました。
「大丈夫よ、普通にして。気を遣うのが一番ダメなのよ。早くこうした笑いの中に入りたいと、自分で思うようにならなくちゃいけないの」
 私は言わずもがなの講釈をしてしまいました。
<ホントはもう、みんなに会わせたって大丈夫なんだけど・・・>
 そう思いながら、まだ、舞衣ちゃんとの蜜月を放したくない自分がいました。

 帰り際、玄関前で私を脇に誘った牧子が囁きました。
「三奈子、いつ帰ってくるの? わたし寂しいよ。三奈子を抱きたいよ」
「無理よ。舞衣ちゃんはこれからが本格的な復帰訓練なの。わたし、帰れるかどうかさえ分からないよ」
 そう言いながら、舞衣ちゃんの介護に夢中になっているうちに、牧子がすっかり自分の脳裏から消えているのを意識しました。牧子との生活に比べて、肉体的な繋がりはないものの、舞衣ちゃんとの視覚的繋がりは、牧子とのセックスよりはるかに濃厚で刺激的でした。牧子にはすまないと思いながら、私はこのまま舞衣ちゃんの側から離れるなどとは考えられなくなっておりました。


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