序章-6
「キアルリア姫、彼はケイ。私のジャケットを預かってくれていたのでお礼に魔法を見せていたのですよ」
「あら、そうでしたの。ファンでは魔法が珍しいですから皆さん喜ばれましたでしょう?」
キャラはにっこりとケイに微笑んだ。
「あのっ……姫はどうしてこちらに?」
もっともな質問にキャラは答える。
「ゼビア国王を迎えに行く途中でしたの。馬車が止まるので何事かと思って……まさか導師様が犯人だとは思ってませんでした」
キャラは悪戯っ子を叱るような表情でアースを見た。
「それは申し訳ありませんでした」
アースも付き合って冗談っぽく謝る。
「導師……様?」
まさか、自分はとんでもなくお偉いさんにタメ口で話していたのか、とケイは青くなった。
「ああ、大丈夫、俺はそんなに偉くないから」
青くなったケイに気づいたアースは手を振って安心させる。
「そろそろ行かないと……導師様も行かれるのでしょう?ご一緒にいかがですか?」
キャラの誘いにアースは立ち上がって礼をすると、手を差し出した。
「姫のお誘いなら喜んで」
キャラはにっこり笑ってアースの手を取り立ち上がる。
「行きますよ、グロウ」
子供達と戯れているグロウに声をかけたキャラはケイに体を向けた。
「ごちそうさまでした」
「い、いえっ」
優雅に貴婦人の礼をしたキャラにケイはおたおたと返事をして、どうしたらいいのかとアースに助けを求める。
「ゼビアに帰る前にまた来るから」
ケイが何も気にしなくていいようにアースは何でもないように普通に言って手を振った。
「あ、ああ…またな」
ケイも片手をあげて答える。
「にゃんこ〜ばいば〜い」
子供達の声にアースはついに吹き出してしまい片手で口を押さえ、キャラはアースの手を強く握って笑いだしそうになるのを必死で堪えた。
グロウは尻尾を振って子供達に合図すると馬車に乗り込む。
2人と1匹を乗せた馬車はゆっくりと進み始め、後には手を振る子供達とポカンと立ち尽くすケイが残された。