序章-20
「うるせぇ!!お前らまで面倒見きれねぇんだよ!!」
情けないが事実。
見えない敵からの攻撃は先が読めないうえに、方向もわからない。
「!!アース!!右!!」
キャラの声に素早く右手を動かし結界を強化するが……
間に合わない。
「がっ!!!」
「アースぅ!!!」
白い刃がアースの肩に突き刺さり、更に何本かが顔や体をかすった。
キャラの目の前でアースの右腕が肩口から吹っ飛ぶ。
吹き上がる血……空中を舞う腕……全てがスローモーションのように見えた。
ピートは咄嗟に手を伸ばして飛んできたアースの腕を掴む。
グラリと体制を崩しながらも左手だけで結界を維持したアースの右目は……潰れていた。
「行け!!」
血だらけになりながら叫んだアースの命令に、アビィは翼を打ち付け猛スピードで飛ぶ。
「アース!アース!!」
腕を伸ばしたキャラに顔を向けたアースは、不敵な笑顔を見せた。
「すぐに行く」
一言だけ言って残された左目で敵の方に向き直り、音にならない呪文を唱える。
「………!!!!」
海が生きているようにグウッと持ち上がって巨大な壁を作った。
大量の水しぶきを浴びたキャラの目に映ったのは……赤い筋を残しながら海に落ちる黒い物体だった。