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忘れ得ぬ人(改稿)
【同性愛♀ 官能小説】

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側聞/早苗とその娘・茜は-8

「奈津子先輩がね、<彩乃が嫌がるから、そういう話は止めて・・・>みたいなことを言ったの。<彩乃だって>って、また先輩がからかうの。ママね、奈津子先輩の口から<彩乃・・・>って言葉が出たとき、急に奈津子先輩が、何て言うかもの凄く艶めかしく見えたし、彩ちゃんも女っぽくなっているように見えだしたの。それはホント、ママなんかの知らない美しい世界に迷い込んだような感じがするほどで、思わず溜め息が出ちゃった。そんな中で聞く彩ちゃんの14番、ママ、泣かされたわ。そしてどこかで奈津子先輩に嫉妬していたの」
「嫉妬?」
「そう・・・一種の嫉妬ね・・・ママなんかには経験できないような世界にいる二人に・・・でも、なんとなく奈津子先輩は苦しそうだった・・・奈津子先輩の苦しそうな顔はどうしてなんだろう・・・やっぱり、自分の性格・・・つまりそのユリ系だってことが悩みなのかしらって。でも、奈津子先輩の繊細さや妖しい色っぽさはそれだったのか・・・こんな可愛い彩ちゃんを独り占めにして愛し合っているのかと思うと、羨ましかった。愛し合っている二人を見ながら切なかったわ。」
「ママもユリ系だったってこと?」
「そうじゃないんだなあこれが・・・何故かって言うとね、彩ちゃんには勇作さんていうお兄さんがいたの。ヒョロッとした電信棒みたいな秀才風でね。その勇作さん、夏休みとか冬休みなんかに東京の大学から帰っていると、時々新田家にくることがあったの。新田のおじさまに男の子がいないでしょ? だからすぐ呼び出しをかけて、車の調子なんかを見てもらうんだって。そんなお手伝いの合間に、ママたちの練習を覗くの。そしたら彩ちゃんがね、男が来るとこじゃない、大切な練習なんだから出ていって、って怒るの。その時の勇作さんの格好が、怒られて尻尾を垂れる犬みたいで、とってもおかしかった。多分勇作さんは、奈津子先輩が好きだったんだと思うのね。お部屋を出るとき、ちらちら奈津子先輩の方を見ながら、名残惜しそうにね・・・そんな勇作さんが可愛くてちょっぴり心がときめいたわ。だけど、何しろ奈津子先輩とでは太刀打ちできなもの・・・憧れただけだけど、それを思うと、ママがそっちじゃないことは確かね」
「ふうううん・・・それで?」
「彩ちゃんとは、あまりはしゃがないママとは気が合ってとても仲良くなったけど、二人きりで話していても、ときどき遠くを見るような目をして溜め息をついたりするの。彩ちゃんの心は奈津子先輩で一杯なんだなあ、女性同士だけど、恋する女性って素敵だなあと思ったわ。だって、二人とも、綺麗さに何か新鮮な魅力が加わってきた感じがしたもの。男の子と付き合って幸福そうにしている恋人同士とはちょっと違う、何て言ったらいいのかしら。大人で言えば<隠微>とか言える感じなんだけど、そんな、ちょっと汚らしい言葉じゃ可哀想ね。要するに・・・艶めかしいのよ。女性同士が愛し合うなんて知らないママには、二人の姿はドキドキしながら想像するだけだったけど、奈津子先輩と彩ちゃんがどれだけ深い結びつきをしていったかは、スゴク分かった。その事については、彩ちゃんもママも何も話さなかったし、しつこく何かを詮索しようなんてしなかったわよ。それに、先輩が言ったように、奈津子の性格は分かっていた、なんて言い方は、どこかに同性愛を特殊に思っている気持ちがあるんじゃないかって思えるのね。ママにはそれがなかった。彩ちゃんの恋する気持ちを大切にしてあげたい、というのが言葉にも出たと思うのね。それを彩ちゃんはよく分かったくれたから親しくしてくれたんだと思う。ちょっと特別にね・・・」
「ママ・・・泣いてるの」
「うん・・・あれだけ愛し合っていたのに、その最愛の人を失った彩ちゃんの苦しみを知っているから・・・側で一緒に泣いて上げるだけしかなくて、何もできなかった・・・」
「奈津子さん、なぜ死んじゃったの・・・」
「よく分かんない・・・奈津子先輩は可哀想だった・・・だけど彩ちゃんはもっと可哀想・・・ああ、ママもうだめ。今日はよそうよ。しゃべり過ぎちゃった。いやだもうこんな時間・・・」


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