祭りの夜-1
今年の夏祭りも大過なく終わり、すでに夜も更けていく時刻。
祭りの神輿が納められた神社の境内。そこにある集会場では、なおも祭りの余韻醒めやらぬ地元の男達の酒盛りが続いていた。年に一度のハレの日とあって、血気盛んな若者を中心にその賑わいはまるで衰える気配はない。
しかしそんな喧騒から外れた境内裏の林の中では、もう一つの夜が繰り広げられていく。
「んぁっ……んっ……!」
闇と静寂の中に響く荒い吐息と喘ぎ。
木の幹へと背中を押し付けられ、正面から身体を密着させてくる幼馴染。すでに熱く火照った身体は、同性からの愛撫によって若い欲望と衝動をいっそう掻き立ててきてしまう。
(何で……伸宏相手に、俺は……)
己の中で昂ぶっていくもどかしいまでの疼き。無理矢理にこんな場所へ連れ込まれての災難であるはずなのにと、大河は激しく狼狽するばかりであった。
「ふ、ふざけんな……マジでやめろ……」
「何だかんだ言ってたくせして、結構お前もノリノリじゃん」
そう言いながら伸宏は、視線を大河の下半身へと向けていく。
「違う、俺は……」
しかし伸宏の言葉で、大河は反論に窮してしまう。
この地域の祭りの風習で、今もなお神輿を担ぐ男達は褌を締める習いになっていた。それが今や大河の股間を覆う褌の白地は、伸宏の手で弄られながらはちきれんばかりに盛り上がっていく。
「今さらそんな真面目ぶんなって。祭りの夜といえばこういうの定番だろ?無礼講だよ、無礼講」
そんな大河へと、伸宏は無邪気に言ってくる。
「だからって……何が悲しくて、お前なんかと……」
今年十六になった大河と伸宏は、大人の男として初めて神輿の担ぎ手に迎えられた。しかしこれも悪習というべきか、祭り後の宴会で大人達に酒を勧められ、すっかり伸宏は酔いが回ってしまった様子である。大河が何を言ったところで、伸宏にはもう何ら理屈が通用しそうにない。
その時、肌蹴られた法被から覗く大河の胸肌へと伸宏が顔を埋めてきた。
「あぁっ……!」
伸宏の舌先が乳首へと添わされ、大河は大きく身を震わせる。
「嫌な相手とでも、お前の身体は感じちゃうんだ?」
「伸宏……た、頼むから……もう、いやだ……」
「俺さ、今日の昼間お前が威勢よく神輿担いでたあの姿にマジ惚れたんだぜ?普段とは違う、大河のギャップが堪んなかった」
伸宏はそう言いながら、舌先で容赦なく敏感な大河の乳首を責め立てていく。
「んっ……はぁっ……伸宏、だからもう冗談やめろ……んんぅっ……!」
駆け巡る性感に翻弄され、大河は激しく身悶えた。その一方、褌の中ではすでに欲望を漲らせた少年のペニスが何度も脈打つ。
やがて伸宏は、そんな大河へと苦笑する様に言ってきた。
「まぁ、信じる信じないはどうだっていいさ。でもどちらにしろ、もう俺こんな中途半端なままじゃ終われねぇよ」
すると伸宏は、大河の前で己が締めていた褌を何の躊躇いもなく外してしまう。
「あっ……」
大河は息を呑んで硬直してしまう。
闇の中、大河の股間へと押し付けられてきた熱く、そして硬い塊。布地越しに伝わるその鮮明な感覚と力強い拍動。
「大河だって限界だろ?このまま気持ちよくなろうぜ」
「………」
「ほら、お前も邪魔なもん外せよ。今夜は無礼講だ」
大河の耳元で伸宏は囁く。
そんな伸宏を前に、大河はもう何も言えないまま立ち尽くす。
猛々しい伸宏の欲望を感じさせられながら、先走りの滴が止めどなく溢れ出していく。大河が締める褌はいっそう淫靡に濡れていくのだった。