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忘れ得ぬ人/側聞(早苗と茜)
【同性愛♀ 官能小説】

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全一章-15

「・・・そしたら・・・彩ちゃんが寝返りするようにママからちょっと離れたの。そのとき、とっても綺麗な二つのロケットと、布で作った小さなお守りみたいなものが、胸から滑り落ちて首から下がったの。あ・・・ロケットだ。きっと、お互いの写真が入っているんだって想像はついたわ。それで、彩ちゃんの胸の中に直してあげようと思って、手作りのような布の袋を手にしたとき、ゴツゴツしたその固さに、ああ、これは奈津子先輩の骨だと思ったの。生涯を奈津子先輩に捧げる決意なんだと思ったわ。なぜそう思ったかって・・・」
「ママならそうする・・・」
「そう・・・ママでも、やっぱりそうするだろうなあと思ったわ」
「どれくらいそうやっていたの?」
「さあ・・・分からない。2時間・・・3時間・・・いや、もっとかなあ・・・小さな汗拭き一枚しかなくてね、彩ちゃんの顔から首から・・・流れる汗をママの手やシャツで拭ってやったり、彩ちゃんのスカートをめくってそれで拭ってやったりしたけど、追い付かないくらいの汗だった。思わず、彩ちゃんのパンティーを脱がせて、それで拭こうかと・・・これ、期待した?」
「バカ」
「とにかく暑かったわ。彩ちゃんは軽いんだけど、抱いている彩ちゃんは、夢の中で奈津子先輩と何してるんだか、燃えるようだった。二人とも泳いだ後みたいだった。なんだか日が傾いてきたなあ、と思ったとき、突然蝉の声が耳に入ってきた。茜の泣き声かと思ったわ。涙が乾いてきたのね。彩ちゃんの鼾も止んでいて、ホント、スヤスヤと眠っていたわ」
「そんな長い間茜はどうしてたの?」
「おばあちゃんに頼んでいたもの」
「あ、そう。いいのよ。冷たい母だなんて思わないから」
「彩ちゃんがやっと目を覚まして、飛び上がってママから離れたけど、直ぐ胸に手をやったのね。何もかも分かったみたい。そして、はにかんだように笑ったの。熟睡したみたいで、彩ちゃんの顔、夕暮れの部屋の中で白く浮かび上がってすごく綺麗だった」
「彩乃先生・・・なにか言った?」
「うん・・・ママの目を、あの目力でジーッと見つめてね、ひとことだけ<ありがとう>って・・・心のこもったありがとうだったわ。もうそれだけで十分。彩ちゃんにはママの気持ちが通じたみたい。眉の間が晴れ晴れとしてたもの。なんていうか、早苗は全てを分かってくれているっていう安心感っていうか・・・」
「ママとの絆ね」
「そうね・・・それまでの友人以上の絆が感じられたわ。だって、その明くる日よ、ママに電話があったのは。東京へ行って復学するって。ママに待っててねって言ったのよ」
「ママ、尊敬する・・・あんたはえらい」
「ありがとう。分かってくれた? ママの気持ち」
「うん、スゴイ感激した」


「ただいま、ママ」
「レッスン・・・昨日の今日だから身が入らなかったでしょ」
「とんでもない。今日ね、とっても良かったって。歌ってるって。ショパンになってるって。先生ね、茜を抱き締めてくれたのよ。こうやって・・・」
「バカ、天ぷら粉が制服に付いちゃったじゃないの」
「茜の顔が今までと違って、とても輝いてるって言ったの。そしてね、いいこと言ったよ」
「へえ、何て?」
「早苗は彩乃の心の支えなのよって。だから茜は、その支えの支えなんだから、今日のピアノにこもった温かい情感を大切に持ち続けてね、って。」
「そう・・・そんなことを・・・良かったわね。それ聞いてホント安心した。茜のピアノも大きな一役をかったのね。」
「茜ね、彩乃先生に抱きついて、うれし涙流しちゃった」
「今度、彩ちゃんの部屋でレッスンしてくれるように頼んでみようね。彩ちゃんのピアノの方が、学校のピアノより断然音がいいのよ。落ち着いてレッスンしてもらえるわ」
「うれしい・・・やっと奈津子さんにも会えるのね」


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