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名門女子剣道部・愛花
【同性愛♀ 官能小説】

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運命の出会い-2

「それにしても…一体誰なんだろ?」

 愛花のつぶやきを聞きつけ、つかさが振り返って尋ねた。

「さっき言ってた先輩のこと?」
「うん…」
「親友がお世話になったんだから、一緒にお礼に行かなきゃ。名前は聞かなかったの?」
「それが…校門をくぐってお礼を言おうとしたら、物も言わずに行っちゃったの…」
「なんかさー、手がかりになるような物なかった?」
「ええっと…肩から黒いケースをかけてた」
「それから?」
「ケースに金の刺繍がしてあって…『船橋』とかって…」
「それだけわかれば十分。あたしにまかしときなって! そのかわりダブルバーガーのセットだかんね」
「うん。だからお願いね、つかさ」
「あっ、あそこだよ! あたし割引チケットもってるんだ!」

 つかさはハンバーガーショップを見つけると走り出した。さっきまでのふてくされた様子はどこへやらだ。まったく元気がいい。
 つかさが手伝ってくれれば、きっとすぐにあの女性に会えるに違いない。背が高くて凛々しくて、とっても素敵な先輩。
 今日のことはちゃんとお詫びして、あらためてお礼を言おう。それから、それから…。何て言おうかしら?
 色々と考えているうちに、

(できることならもう一度抱きしめて欲しい…)

 なんて考えが一瞬頭をよぎって、愛花は赤面して思わず首を振った。
 でもそんな考えを頭から振り払おうとすればするほど、抱き止められた時の甘い感触がよみがえって胸の動悸が止まらない。
 先輩のふんどしを締めた真っ白なお尻。
 なまめかしい後ろ姿がちらついてしまい、その晩も愛花はなかなか眠れなかった。

3.
 本格的な授業が始まった日の放課後、先輩のプロフィールは簡単に判明した。
 つかさが上級生に聞き込みをして色々と情報を仕入れてきたのだ。

 名前は船橋美貴(ふなはし・みき)。
 剣道部の副主将で3年生。
 両親は共に大学教授。
 ドイツ系クォーター。

 つかさは机の上にどっかと腰かけ、愛花を前にして喋りまくる。
 今にも「エヘン」とでも言いそうなドヤ顔で、鼻高々だ。

「でもあの先輩、2年生から熱烈に愛されちゃっててさー。いきなりプレゼントでも渡そうもんなら、首絞められたりカミソリ入りの手紙送られたりしちゃうよ〜!」

 どうりで。
 背が高くて綺麗なのも、髪が栗色なのもそれで納得がいく。
 あんなに目立つ先輩をみんながほっておくわけがない。愛花は聞きながら頷いた。
 星月女学院の剣道部は毎年県大会に駒を進める強豪。
 部員達は皆成績も良く、文武両道の精鋭揃い。
 主将を務める橘玲(たちばな・れい)は美貴の親友。
 彼女は去年、彗星のごとく現れて全国中学校剣道大会で優勝をさらった天才剣士だという。

「今週、新入生向けの説明会があるみたいだから行ってみたら?」
「ありがと。どうしよっかな…」
「それとも勇気出して直接会いに行けば? 船橋先輩はB組だってよ」

 もじもじしている愛花を見てつかさがツッコミを入れた。

「軽い気持ちで行けばいいじゃん! 愛の告白じゃないんだからさ!」

 美貴に会って告白することを想像しただけで愛花は顔が火照り、どぎまぎしている。

「からかわないで! 私…そんなつもりじゃ…」
「真っ赤になっちゃって可愛いなぁ。もうおじさん襲っちゃうぞ!」

 つかさが抱きついて愛花をくすぐった。

「ここが感じる? それともここ?」
「やだっ…。やめ…あっ…あんっ!」
「うーん、色っぽい声出すわね〜。これなら先輩もきっとイチコロよ?」

 つかさの手が愛花の制服の中に潜り込み、ブラの上から胸を優しくなで上げる。背中がぞくぞくして、つい身体をくねらせてしまう。その反応を面白がり、つかさは遂に愛花を机の上にばたん!と押し倒した。
 両腕を押さえつけられた愛花の怯えた表情を見て、つかさは思わずドキッとした。
 なんて愛らしいんだろう? がさつで元気さだけが取り柄の自分とは大違いだ。まるで愛されるために生まれてきた、花のような女の子…。

「いやっ!!」

 愛花の叫び声を聞いて、つかさはふっと我に返った。
 あわてて離れると後ろを向きながらこう言う。

「と、とにかくさ、あたしが応援してやるからがんばりな!」
「う、うん…」
「そろそろ帰ろ? いくわよ愛花!」

 机の脇にかけてあったカバンを取ると、つかさはすっと立ち上がった。
 いつもなら2人ではしゃぎまわっているのに、今日はなんだか勝手が違う。
 それというのも愛花がいけないんだ。
 最近は「先輩、先輩」ってうわ言みたいに言ってぼーっとしてる。
 あたしのことなんか全然なんとも思ってないんだ。
 つかさは大切な親友を先輩に奪われてしまったような気がして、なんとなく面白くない。助けてあげたいような、意地悪したいような、形容しがたい気分だった。

(可愛い愛花…。あたしが守ってあげなきゃ何もできないんだから!)

 つかさは胸の奥でそっとつぶやくと、強引に愛花の手を握りぐいぐいと引っぱってゆく。愛花はつかさの雰囲気にいつもと違ったものを感じたのか、何も言わず黙って引かれてゆく。帰り道でも2人の会話は少なかった。
 2人の幼い友情も時を経て、そろそろ次のステップにさしかかっているのだ。

4.
 トン、トン、トン、トン…。
 朝食前の日課にしている素振り200本を終え、美貴は階段を上り自室に戻ってきた。
 冷たいシャワーを浴びてきたので、髪はまだ生乾き、身体にはバスタオル1枚巻いただけの姿だ。
 美貴の部屋はシンプルきわまりない。ベッドの枕元にクマのぬいぐるみ、机の上に小さな鉢植えがある程度で、あとは本ばかり。年頃の女の子のものとは思えぬ、驚くほど殺風景な部屋だ。


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