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<12月>
【OL/お姉さん 官能小説】

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大晦日-1

夢のような3連休はあっという間に終わってしまった。連休最終日はねーちゃん一家に振り回されたけれど、おかげで将来の約束ができた。でも人間は欲張りだ。3晩も一緒に過ごしたら帰したくなくなるのだ。このままここに住めばいい、と喉元まで出かかって堪える。

「明日からまた鈴木主任、ですね」

チカの部屋の前まで送って行く途中、ちょっと寂しそうな顔でチカが笑った。

「そうだな、でもとりあえず3日間の辛抱か。年末年始は実家に帰るのか?」

「ううん、こっちにいます」

「他になんか予定あるのか?」

「んー、29日が大学時代の友人たちと忘年会で大掃除して、初売りに行って福袋買うくらいですかね?」

「じゃぁ大晦日ウチ来ないか?一緒に年越ししたい」

「あ、じゃぁウチで鍋しませんか?31日に実家から鮭とカニが届くんです」

「いいのか?」

「はい!なんならこのままずっと泊まっていってくれても…ってムリですよね、さすがに」

そんな表情されたら、そのまま抱きかかえてさらってしまいたくなりますけど?まぁさらわないにしても、建物の影にでも引きづりこんでキスしたくなりますけど。

「ずるい、先言われた。オレ我慢したのに」

「へ?」

「さっき、部屋出るときさ。帰らないでずっとここにいろって」

「…まぁ、無理ですよね」

複雑そうな顔をするけど、頬は嬉しいって言ってる。どこまでもかわいいヤツ。

「とりあえず、あと3日頑張るか」

「うん、じゃぁ、おやすみなさい。ありがとう送ってきてくれて」

「あぁ、じゃぁまた明日、な」

チカが部屋の中に入ってドアが締まるのを確認して自分の部屋に戻る。もう何年も一人で寝てきたベッドってこんなに広かったっか?どうやらオレのチカ中毒はソートーなモンらしい。それは連休明け、仕事納めまでのたった3日間に思い知ることになる。

**************

…あぁ、面白くない。

仕事納めの日。チカがいつも通り同僚たちに笑顔を振りまくのも、年齢の近い鈴木航太とさっきから仕事しつつも雑談で楽しそうに盛り上がっているのも、面白くない。なのにオレに対しては連休前とあまり変わらぬ態度だ。

「鈴木主任、外線1番○○商事××さんからお電話です」

…航太と話してる時の方が、オレといる時よりイキイキしてるように見えるのは気のせいだろうか?

「鈴木主任?」

「修平さんっ」

「あ?」

航太に呼ばれてパソコンのディスプレイから視線をあげると、チカと航太が不思議そうな顔でこちらを見ている。

「鈴木主任、○○商事××さんからお電話ですけど…」

「あぁ、悪い」

電話が鳴っていた音もチカが呼んでいた声にも気づかないなんて。電話対応が終わると思わず自分のふがいなさにため息が出る。

「修平さん、体調悪いんじゃ…?」

受話器を戻すと人懐っこい修平が心配そうに声をかけてくれた。

「いや、悪い。考え事してた。ちょっと一服してくる」

チカはこちらを見て何か声をかけるべきか否か迷っているようで、結局無言のまま頷いてオレを見送る。その視線を背中に感じながら営業所を出てビル内の共同喫煙所に向かうお昼直前の喫煙所は貸切で深いため息をついてから煙を吸い込む。連休中はタバコの減りが少なかった。チカは気にしなくていいと言ってくれたけれど。そういえば航太も非喫煙者だな。今頃2人でさっきの続きで盛り上がってるんだろうか。ちっちぇえなぁ、オレ。こんなに自分が嫉妬深いオトコだとは想像もしなかった。

コンコン。

遠慮がちにドアをノックする音。窓から覗くとチカが立っていた。

「どうした?」

「…いえ…なんとなく…」

「入るか?」

ちょっと考えるような顔をしたが、オレ以外誰もいないと知るとサっと入ってきた。

「ほんとに具合悪くないですか?」

「あぁ、おせちどうしようかなって考え込んでた」

「おせち作るんですか?」

「嫌い?」

「ううん、食べたことない」

「マジで?」

「っていうか、すんごい深刻そうな顔して画面見てたのに、考えてたのはおせちのことなんですか?」

ちょっと呆れたような顔もかわいい。まさか真実は言えませんよ。キミと航太のからみに嫉妬してモンモンとしてました、なんて。

「鈴木主任、今晩お忙しいですか?」

周りを気にして声をひそめてチカが訊ねる。

「いや?」

「ご飯、一緒に食べませんか?今年も1年お仕事頑張りました、ってことで」

「それいいなって、今日は残業じゃないのか?」

「あ…早く終わるように頑張ります」

月末処理で毎月苦しんでいる姿を遠くから眺めていた。今月は連休と年末年始休暇のおかげでいつもより準備期間も短いため相当大変なのか、チカのテンションが少し下がる。

「報告書の入力なら手伝えるぞ、担当してた時期あるから」

「助かります!私、そろそろ戻りますね」

「ありがとな」

「え?」

「ほら、行って少しでも仕事片付けとけ」

「はい」

我ながら現金だ。さっきまでのモヤモヤとユウウツがチカの笑顔と心遣い、そして提案で吹っ飛ぶのだから。一緒に戻るのはさすがにマズイと思い、チカを見送ってからもう1本吸って営業所に戻る。冗談抜きにおせち、本格的に作るかな。チカに食べさせてやりたい。


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