別離の間〜Side:Z〜 -7
「あ?そっだなぁ……お前ぇはアビィで先に行ってもらうわ」
何故国王がこんな事をしているかと言うと……暴れたいから。
国王の替わりに馬車ではベルリアが悠々と寛いでいた。
こういう時は国王の事を名前で呼ぶ。
「先触れか?アビィで行くならエンがいいだろ?」
王族や貴族が招かれた場合、事前にいつ頃到着するか知らせておく必要がある。
そうすれば、迎える側がバタバタしなくて済むし、他の貴族達と重なった場合は身分の低い方が譲ったりも出来る。
「気ぃきかせて言ってんだよ」
国王の言葉にアースはしばし考える。
「つまり〜早くキャラに会いに行けって事だよぉ。アビィ、アースと一緒に行ってくれる?」
エンは縛りあげた野盗を騎士団に渡すとアビィに聞いた。
『キュア♪』
アビィは快く引き受ける。
「あ〜っと……んじゃ先触れいってきます」
「仕事忘れんなよ」
ポリポリと頭を掻いたアースはその手を振ってから、巨大化したアビィに乗った。
飛び立つアビィの背でアースは満面の笑顔を浮かべる。
ファンはロイヤルウェディングに盛り上がり、まさにお祭り騒ぎ。
「城に降りたら攻撃されっかもなぁ……アビィ、森に降りるぞ」
『キュッ』
いきなりドラゴンが降りてきたら誰でも驚くだろう、とアースは人気の無い森へ降りる。
「アビィはどうする?俺と行くか?」
『キュイ』
アビィは頷くと小さくなってアースの腕にしがみついた。
頭の上じゃなくていいのか?と目だけで聞くと、クルンと見つめ返してくる。
(エンの頭だけが好きなわけか……)
確かにあの赤い髪は暖かそうだ、となんとなく納得したアースは城の方に足を向けた。
城下町は出店が出ていたりしてかなりの大賑わい。
出店で飲み物と軽い食べ物を買ったアースは、近くのベンチに腰かけてアビィと休憩。
買った串肉をアビィにわけてやると、両手で器用に串を持って食べている。
行儀がいいなあ、と感心して自分も食べていると色々な噂話が聞こえてきた。