別離の間〜Side:Z〜 -6
「ま、それはいいとしてファンのロイヤルウェディングだからな、各国の代表が集まる。ついでにお前ぇの紹介もすっから、マジで気合い入れろや」
ゼビアからファンまで約1ヶ月かかる……猶予は後1ヶ月……のんびり構えてる場合じゃなくなった。
アースは立ち上がると、招待状を国王に返して再びダンスの練習を始めた。
どうにかダンスの合格点をもらい、その他諸々のマナーも習得し、いよいよ出発の日となる。
ファンに行くメンバーは国王、アース、ベルリア、エン、騎士団10人。
「学校は?」
アースは不思議な顔をしてベルリアに聞いた。
ベルリアが国王についていくなど今までなかったのだ。
「ああ……リンに学長の座を譲って辞表を出した」
「はあ?!」
学長を辞めると聞いたアースは驚く。
「ファンにそのまま残ってミヤと結婚する」
ミヤが巫女を辞めてゼビアに来る事など考えられないので、一緒になりたいならベルリアが行くしかない。
「へぇ、なるほど……そりゃおめでとう」
「ありがとう」
リンと分離したら結婚しようと約束していた。
分離後バタバタと色々あって遅れてしまったが、いい機会だし国王の護衛を最後の仕事にする。
「リンはなんて?」
「別に何も。30年前ぐらいから決めてた事だしね」
「ふ〜ん……」
ベルリアもミヤも成長が遅い種族で、ベルリアは100歳以上、ミヤも50歳は越えているらしい。
だからと言って30年も待ち続けられるなどアースには考えられない。
アースなどたった5ヶ月離れているだけで気が狂いそうになっているというのに……。
盛大にため息をついたアースの肩をベルリアはポンと叩いた。
「そんなわけで父親でいられるのも後1ヶ月だからね」
「ああ……そうなるのか……」
それは少し寂しいなあ、と呟くアースにベルリアは軽く笑って立ち去る。
ファンまでは馬で1ヶ月、船に乗り換えて1日。
陸路はたいしたトラブルもなく無事に進んだ。
「襲うなら相手を選ぶんだったな」
野盗を踏みつけたアースは剣を片手に不敵な顔。
そう、野盗に襲われるのもたいしたトラブルには入らない。
「呆気ねえなぁ……これからなのに……」
ねぇ?と首を傾げて踏みつけた野盗に聞く。
野盗はぶんぶんと首を横に振った。
「港の警備隊に引き渡して、そこで1泊だな。それでいいか?ドグ?」
アースは剣を軽く振ってから鞘に収めると、野盗を縛りあげている国王に聞く。