三連休 始まりの夜編-2
「せっかくだし、北口に飲みに行ってみる？」
「鈴木主任、大丈夫ですか？けっこう飲まれてたみたいですけど…」
誘われたことにびっくりして聞き返すと、鈴木ほど飲んでないと怒られる。結局最寄り駅で降りて、いつもとは反対側に足を踏み入れる。同じ駅なはずなのに、雰囲気の違いに戸惑いながら無難そうなチェーン店の居酒屋を選んで入った。３連休前日、もうほとんど３連休初日の時間だというのに、店内はかなり混み合っている。２人用のスペースだが、向き合って座っていてもかなり密着した感じ。ほりごたつっぽくなっているけれど、鈴木主任の足が長いからか、何度か膝がぶつかる。隣のカップルは２人とも相当出来上がっているみたいでテーブル越しにキスはするわイチャイチャが激しくって、正直目のやり場に困ってしまった。ラブホに行こう、と女の子の方が騒いで出て行くのを唖然と見送る。
「すごかったね、あの２人」
苦笑していた鈴木主任がふっと真顔になる。
「ウチらも行く？ラブホ」
「え？あ…は、はい」
なんでだろう？思わず頷いてしまった。私嫌われてるんじゃないかって思ってたけど、違うのかな？それとも酔った勢いなのかな？でも声が、眼が、触れてくれた指がとてもセクシーで拒否できなかった。
「じゃぁ、行こうか」
私の荷物もすっと持ってくれて、出口へとエスコートしてくれる。会計も払うと主張したけれどスマートに断られて、いつの間にか私の小さな手は鈴木主任の大きな手のひらに包まれてた。３連休前日じゃ満室かもね、なんて話していたのにいきなり空室ランプがついたホテルが目の前にあって、心拍数は跳ね上がる。
「鈴木はオレとこういうところ入るの、本当にイヤじゃない？」
入る寸前で立ち止まって、尋ねられる。
「鈴木主任となら、セフレでも構いません。」
私はなんてことを口走っているのだろう。ずっと憧れていた鈴木主任が求めてくれるなら、愛のないＳＥＸでもいい、と思った。でも一回だけの関係で終わるくらいなら、身体だけの関係でもつながっていたいと思ってしまったんだ。一瞬、鈴木主任は驚いたような表情をしたけれど、そっと微笑んで、手を強く握ってから歩き出した。ホテルの中に入ると空いていたのは奇跡的に１つだけ。フロントで鍵を受け取り、乗ったエレベータのドアがしまった瞬間抱きしめられた。次の瞬間にはキス。もうそれだけで下着が自分のはしたない液で汚れるのがわかった。部屋に入ると靴も脱がないままもう一度キス。お酒とタバコの味がする。でも今までにキスだけでこんなに感じたことなんてない。上手なキスってこういうことを言うんだろうか。唇が離れてから靴を脱ぐと手を繋がれ、ソファへ誘導される。
「風呂入れてくるからちょっと待ってて。寒いからあったまったほうがいい」
いやいや、２人とも相当飲んでるから、お風呂はまずいんじゃないかと思ったけれど言い出せず。冷えるから、とコートを着させたまま私を座らせたのに、自分はコートもスーツの上着も脱ぐ。ネクタイを緩める動作も、袖口のボタンや、襟のボタンを外す動作にも見とれてしまう。
「鈴木、まだ裸にもなってないのに、見すぎだから」
そんな私に鈴木主任が苦笑する。だってとってもセクシーで…そんな間に主任はバスルームへ消えるとバスタブにお湯をはる準備をして戻ってきた。ソファにならんで腰をかける。足も長いし、手も長い。少しは間をあけて座ったつもりなのに、簡単に抱きしめられてしまう。甘い言葉と一緒に降ってくるキス。あぁ、意外にこういう時は饒舌なんだなぁ、なんて思いながらもどんどん身体はとろけていく。服もどんどん脱がされていく。
「いっつもこんなにエロい下着つけてるの？それとも今日は特別？」
白い下着でそれほどエロくはないと思うと否定したのだが、どうやら鈴木主任はヒモパンがお気に召したご様子。
「解いていい？」
私をソファの上に立たせ、すこしかがんで唇でヒモをくわえるとひっぱって解く。反対側も同じようにほどかれると、被っていた布が足元に落ちて、主任の目の前に私の秘所が現れる。主任の息が茂みにかかる。
「もしかして、もう濡れてる？」
「鈴木主任があんなにエッチなキスするから…」
「キスだけでこんなになっちゃうんだ。やらしい。もうちょっと待ってて。期待に応えられるよう、努力するから」
頭に手をポンポン、と載せ、バスルームへ戻っていった。なんだか寂しいなとさえ感じ始めた時、ひょこっと顔を出して私を呼んだ。
「鈴木、ほら一緒に入ろう」
「え？一緒に？」
「ほら、おいで」
広いバスルーム。待っていてくれた鈴木主任は私を招き入れると再び抱きしめてキスをする。シャワーを優しく浴びせながら、手でボディソープを泡立てると、私を洗い始める。
「じ、自分でやります」
「ダメ。オレが洗うの。洗いながら気持ちよくしてあげるから」
確かに、細長い指が優しく身体中を這うのは今までに感じたことのない気持ちよさだった。