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黒の他人
【ラブコメ 官能小説】

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赤い唇<後編>-1

「もしもし?え、お母さん!?うん、うん……」

突然、けたたましく鳴り響いた加奈の携帯。
その対応から見るに、どうやら相手は母親からみたいだ。

加奈を抱くことに後ろめたさなどない。
あいまいな関係性が少し気にはなるが、無理に型にはまるつもりもない。
けれど、そこに母親なんて存在が介入すると話はまた別。
いきなり現実に引き戻されるような、思ってもない罪悪感にかられるもやもやした気持ち。
おそらくそれは、俺が加奈よりひとまわりも年上という負い目からだろう。

「り、龍二さんっ どうしよう!」

「ん?電話終わったのか?」

「は、母がっ そのっ 早く、どうしたらっ」

「……落ち着けよ小娘。ただでさえ要領を得ない喋りに拍車がかかってるぞ?」

俺は立ち上がり加奈のもとへと近づくと、
まるで大人の余裕を見せつけるように、いつものように頭を優しく撫でてやった。

「す、すいません…… えと、母が近くまで来てて、今からここに来るらしいんですが……」

「ほう? ……って、えぇっ!?」

俺は目を剥き思わず大声を上げてしまった。
いや、こんな時に大人も子供もないだろう?
いくつになっても他人様の親なんてものに会うのは緊張するし、
出来る事なら避けて通りたい相手のナンバーワンなはずだ。

しかも、友達でも恋人でもない相手の親にだなんて、
いったいどんな顔して会えっていうんだ。

わずかな時間、俺と加奈は見つめ合いながらフリーズしていた。
けれど、たぶんそんなことしている暇はない。
とにかく服を着なければ。

「加奈っ とりあえず服着ろ!裸じゃなんの言い訳もたたねぇ!」

「は、はいっ」

バタバタと音を立てながら、慌てて服を着る俺たち。

「バカッ!おまえセーラー服なんて着てどうすんだっ」

「はぅっ ま、間違えましたっ」

加奈もまた動揺を隠せない様子。

「どうすんだよ?俺のこと、なんて説明するつもりなんだ?」

「はわわっ ど、どうしましょう!どう言えばいいですか?」

「お、俺に聞くのかよっ?」

「だ、だってぇ…… な、何も思い浮かばないんですもんっ」

関係なんていちいち決めつけるものじゃない。
時の流れに任せて、ゆっくりと築き上げればいい。
なんて、悠長に思っていたのに、まさかこんなにも早くその必然性が出てくるとは……


ピンポーン


そうこうしているうちに部屋のチャイムが鳴り響く。
どうやら年貢の納め時のようだ。


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