PiPi's World 投稿小説
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No17-2009/11/11 00:09
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
何が正解なのか分からなかった。
彼女の、どうすれば私を嫌いになってくれるの?という言葉に、どんか答えを返せば正解なのか分からなかった。
医者によると、彼女はもういつ死んでもおかしくない、という事だった。
「ねえ、分かるでしょう?」
そう言って彼女は笑う。
それは他の誰の為でもない、純粋にぼくの為に作られた笑顔だった。
「このままだと、もし次の誰かがあなたの元に現れても、あなたは先に進めないわ。ねえ、お願い。言って。どうすれば私を嫌いになってくれるの?」
彼女のか細い手が、ぼくの手を握る。
思ったよりも強い力が、その手にこもっている事が、彼女の覚悟をぼくに示した。
暗闇の中で死のうとしているのだ。
ぼくの為に。
「ふざけるな!」
思わず叫んだ、ぼくが居た。
「知ってるよ!君が死ぬ事位知ってるよ!けど、絶対に孤独の中でなんて死なせないぞ!君は死ぬ!そしてその時の隣には絶対にぼくが居る!ぼくは君が死ぬ瞬間を見る!そして泣くんだ!泣いて!泣いて!けど、それは絶対に正しい姿なんだ!君を愛するぼくの姿なんだよ!」
叫びながら、涙が頬を伝ってくるのが分かった。そんなぼくを、彼女は笑った。
涙を流しながら、笑った。
No18-2009/11/11 00:09
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
次は「涙を流しながら」でお願いします。
No19-2009/11/11 22:28
女/桜井
822P-5ys4E6s0
涙を流しながら笑った胸のうち。ねえ、醜い想いを知らないでしょう。
死にたくないの、死にたくなんかないの、なのに私は死ぬの。お医者様はいつ死んだっておかしくないなんていう。皆が同情の視線をくれる。君は日に日に笑顔をなくす。
ねえ、私、思うの。
私を殺すのは病気じゃなくて、君たち、みんな。

だから私は傷をつける。君の柔らかくて繊細な心に、見えないように、気づかれないように爪をたてる。
ねえ、苦しんで。悩んで哀しんで泣いて、泣いて。私のことで君の中をいっぱいにしたいの。最後の最後まで可哀想な私の皮をかぶってあげるから、だから、ねえ、私のこと、

「私のことなんてすぐに忘れて、幸せになって」

いつか誰かが君の心を覗きこみ、そこに残る無数の傷に気付けばいい。その為に私は最後の最後まで足掻くから。君に傷をつけるから。

少しでも長く君が私を想ってくれますようにと、願いを込めて。


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ごめんなさいすごく勝手なことを書きましたフロムポストさん許してください許してください。


『願いを込めて』で^^;
No20-2009/11/12 01:02
男/髭
SN3K-L19wGSiz
願い込めても彼女は死ぬし、彼は生き続ける。冷たくなった身体は残るし、彼の彼女を想う気持ちは、どこかへ消えてしまうんだろう。
「先生、なんとかならないんですか」
彼は言う。『願いは祈りに似ている』。彼が泣き出すように言っていた顔には、そんな言葉が似合う気がした。

「彼女は死ぬんです!でも、でも……!」

彼女はいつ死んだっておかしくない状態だった。まだ生きていることが不思議なくらい。
人ってやつは、不思議だ。ここぞって時に見計らったように奇跡を起こす。彼女がまだ生きているって奇跡は彼に何かを起こす為に起きている、なんてそんなドラマチックなことを考えずにはいられない。
「精一杯のことはします。だから。だから貴方だけは、彼女の味方であげて下さい。彼女自身がなんと言おうと、必ず」
私はそれだけ言うと、彼の肩を軽く叩いて診察室を出た。暗く光る廊下には、私の身体と顔が写っている。
「can you feel...?……か。私は、あの子達の様に笑えていただろうか」

身を焦がすように彼女の身体だけを案じる彼と、生命よりも彼の未来を案じ続ける彼女。感じ入るだけの二人の物語を紡ぐ奇跡が起こればいいと、私は思わずにいられなかった。
No21-2009/11/12 01:05
男/髭
SN3K-L19wGSiz
フロムポストさんのスピンオフばかりで参加してすみません。
次は少しながく「私は思わずにいられなかった」で。
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