PiPi's World 投稿小説
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No7-2009/09/26 00:00
男/ラクシェア
TS3C-Z7i5KjZe
許してくれる?

駄目元で尋ねたよ、もう可能性は無いってわかってるけど。

君との約束を破るというこれ以上ない罪から逃れるため、君を裏切った罪を償うため。そのために僕は地を這いつくばりながら詫びよう。

止めておくれ、冷た過ぎるその眼。 僕が心を奪われたのはもっともっと暖かかったのに。

どうか慈悲をどうか僕に情けを………



『で、浮気の言い訳は以上かな?』
『はい、すみませんでした………』
土下座する僕の頭に乗せた足に、彼女は微笑みと共に全体重をかけた。


次は『全体重』でお願いします。
No8-2009/10/07 22:49
男/髭
PC-I0BsYTOF
全体重を僕に預けても、彼女は軽かった。それは落ち葉を思わせて、僕は泣きそうになった。
「私は死ぬのね、なんて哀しい事言わないわ。だってそうでしょう?そんなことすれば、私絶望してるみたいじゃない。」
彼女は、僕の腕の中でもがく様にそう言った。
「そうかな?」
「そうよ、絶対そう。私絶望なんてしてないわ。ただ少しだけ、希望を失ってるだけよ。」
僕の胸元が濡れていくのがわかる。それが彼女がもたらす涙から成るのか、熱い吐息がそうさせるのかは、僕にはわからなかった。
解らなくても、僕は彼女を強く抱きしめるべきだってことは、理解できたのだけれど。
「いたい」
彼女の、その細い腕が。白い肌が。透き通る髪が。弱々しい。
僕の体には余ってしまう程、彼女は小さい。
「希望もしてないけれど、絶望もしない。それって愛だと思わない?」
僕の、この僕の全てを賭けてもいい。僕は願った。非力な神に。偶像の世界に。
「これが愛だと思うから、私は生きるわ。そう。私は生きるのよ。」

彼女の重みを確かめながら、僕は、僕だけは、この時間がいつまでも続けばいいと、願っていた。



次、「願っていた」で。
No9-2009/10/09 23:41
男/ひで
830P-5rxvFIRh
願っていた。

自分の努力のたりなさを神仏に頼むのか?

願う真実より努力する真実の方が、神仏も受けとるよ。

その努力は自分が報われる為の努力ではなく愛する者の為の努力なら。

必ず

報われる。
No10-2009/10/10 00:27
女/桜井
822P-5ys4E6s0
報われる日を夢見て書き連ねた言葉の数々を、振り返って、ただ汚したにすぎないと知る。白かったはずのページはいつの間にか思い出したくもない記憶で埋まってしまった。なんにもならない。意味なんてない。もはや形すら、成さない。
けれど書きなぐったこの凡庸でくだらない物語を、決して幸せな結末を見ない人生を、けれど、けれど、もう戻ればしないのだから。

前を見る。なるたけ遠く、高くを見る。それが報われない道と知って、それでも、次のページへ。



『次のページへ』で^^
No11-2009/11/07 03:03
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
次のページへ捲ろうとした時だった。
「待って、まだ読んでる」
ぼくの手を彼女の声が制した。
月曜日よりの使者、とぼくらが呼んでいるその週刊漫画雑誌を一緒に読む事は、ぼくらの間で週に一度の習慣になっている。
当初はジャンケンをして勝った方が先に読む権利を与えられていたが、ぼくが勝つと彼女があまりに悔しそうな顔をするので、ぼくの方がそれに耐えかねて、「じゃあ、一緒に読もうか」と言ったのがきっかけだ。
今読んでいるのは、下ネタ全開のギャグ人情漫画。
あはは、と彼女はそのギャグ人情漫画の一台詞に笑う。
いつからだろう。とぼくは思う。
付き合った当初は、お互いに気を使ってばかりだった。
ちょっとお茶をした時でさえ必ず彼女は割り勘を指定したし、デートの度に彼女は毎回髪を本当に綺麗にセットして来た。
それが今はぼくの横で、スウェットを着て、下ネタで笑っている。
その距離感を、ぼくは決して残念だとは思わない。
ぎこちなく、しかし確実にお互いの本心をごまかしていた頃に比べれば、それはとても幸せな事だ。
「はい、次のページ」
彼女の声で、ぼくはそれに従う。
このページで彼女はどんな風に笑うのだろう。
それを想像して、ぼくは幸せな気分になる。
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