PiPi's World 投稿小説
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No968-2009/06/10 21:34
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
次は少し難しめに、『消えるだけの生き方』でお願いします。
No967-2009/06/10 21:33
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
「裏切りが無いからよね、煙草には」
何故煙草を吸うのか、彼女に尋ねたらそんな答えが帰ってきた。
疲れた顔をしていた、疲れた目を、仕草をしていた。
一体、彼女は何に疲れたのだろう。
想像しようとして、止めた。
きっと、全てが正解で全てが間違いだ。
「煙草の何を信じているの?」とぼくはきいた。
裏切りが無い。そう言ったのなら、煙草の何かを信じている筈だ、そう思った。
「何だと思う?」
煙を吐きながら、彼女は笑う。
それはぼくに対する嘲笑にもとれたし、皮肉にもとれたし、少し好意的なとり方をするなら、何か助けを求めた笑みのようにもとれた。
だがそのどれをとろうと、ぼくの答えは一つだった。
「死期を早めるところとか、かな」
ぼくがそう言った瞬間、彼女は煙を吸う事も忘れ、ポカンとした顔をし、そして、くつくつと笑い出した。
「あんた、分かってるよ」
そう言って今度は大笑いし始めた。
何が可笑しいのか、普通の人には多分良く分からない事なのだろうけど、生憎、ぼくには良く分かった。
彼女もまたぼくと同じだ。
死にたがり。
煙草と同じだ。
ただ燃えて、消えるだけの生き方。
No966-2009/06/06 09:56
女/商法穂
PC-h7tvTJxU
「歩みませんか。これからの人生を俺と一緒に。」

それは、突然。
海の前で言われた言葉。
すごく欲しかった言葉。
誰よりもあなたに……。

好きすぎて、涙が出そう。
触れたくて、手が震える。
YESと言いたくて、唇が開きかける。

けど、

「私、明日、結納なんだ。」

そう。私は他の人との結婚が決まってしまったの。

遅すぎたプロポーズ。
遅すぎた告白。

「遅すぎたんですね。俺、自分の気持ちに気づくの」

あんなに強くて、あんなに自分の信念を曲げないあなたのその弱すぎるため息。
抱きしめたくて仕方ない。

それでも、私は人を裏切ることができないのです。
自分の気持ちは裏切ったとしても。



『裏切り』でお願いします。
No965-2009/06/06 02:05
男/コルト
TS3H-65VWs5.x
 佇んでいたカラスが、高い鳴き声を上げ夜の帳へと姿を消した。
 住宅街に張り巡らされた何本もの細い道のうち、もっとも人通りが少ない道に差し掛かる。
 錆び付いた街灯は、道を明るくする使命を全うしようと努力をするも、残り少ない寿命の電球ではそれもままならないようだった。ただの生け垣の葉が、人の顔に見える。奥にある郵便ポストが、人に見える。
 周りの住宅に灯りはついておらず、道を照らすは雲に隠れた月光だけだった。
 百メートルもない道が、数キロの長さに感じる。カラスが飛び立つ音がする度に、すぐさま後方を確認した。
 一気に駆け抜けようと思うも、先の暗闇が邪魔をする。身を潜めた変質者がいないとも限らない。
 異様な焦燥感に苛まれながら、私は一歩一歩歩き続けた。


「歩」でお願いします
No964-2009/06/03 16:03
男/白いフクロウ
831P-OtmwnKgP
 照らした光が写し出す微かな、しかし確かに刻まれた凹凸の陰影は、月並みな表現だが、いまにも動き出しそうな印象をその彫刻に与えていた。
 爪の先から髪の毛の流れのごく細部まで丁寧に彫りこまれた、まるで血も通うかと見紛うほどの写実性。雄々しく形づくられた筋肉の造形と、遥か高みを、それでも睨みつけるように見上げる凛々しき瞳が持つ圧倒的なほどの躍動感は、胸を打つほどに芸術である。
 かつての英雄を象ったその大理石は、勇姿をその光に向け、存在感を衣の如く纏い、悠然と佇んでいた。


『佇』で
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