PiPi's World 投稿小説
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No729-11/15 17:39
男/フロムポスト
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帰ろ
そう思って学校を出てから、帰る途中にふと思い立ち、ぼくは近くの公園に立ち寄った
そこの夕日があまりに綺麗で、何の気なしにボーっとしていた
通りかかった二人組の初老の女性が「青春ねぇ」と言うのが聞こえた
そんな事を言うけれど、まるで気楽に生きていて羨ましいみたいに言うけれど
これでもぼくらは結構揉まれて生きている
問題尽くめの政治の影響を受けて、大人達はイライラする
そしてその精神的ストレスは周り回ってぼくらにやってくる
そのストレスを子供達は受け止め、その分だけ自らを歪ませていく
そして結局、また誰かを傷つける結果に至る
そんな世の中がひどく薄っぺらく見えるのも、また青春の内と笑われるんだろうか
ぼくらは若くて知識不足で、認識不足で、経験不足だ
でもそれでも変わりすぎてついて行けない変わらない毎日をあなた達大人の隣で生きてきた
明日も此処に夕日が沈む事はぼくらにとって希望なのか、絶望なのか
それを大人達に問いても、間違い無く希望だと言ってまた延々とそれについて考察を述べるだけだろう
飽きた、校長の挨拶位に飽き飽きだった
何とかならないかなぁ…
そう思っている自分の子自分の子供っぽさにまた少しイライラした

次回は子供で。
No728-11/15 01:18
男/白いフクロウ
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女:おはなしがあるっていうからきたんだけど……。
男:え? そっちが呼んだんだろ?
女:あれそうだっけ。ではなしってなに?
男:いや知らないから。
女:あれ? ……ではなしって?
男:だから話があるのはそっちだろ?
女:あ、そっか。んで、ところではなしはなんなの?
男:…………知ってる? 冥王星が惑星じゃなくなるらしいよ。
女:あ知ってる知ってる! あれおいしいよねー!
男:……うん。だよね。
女:やっぱ冨樫さんは天才だよねー!
男:ゴンとユピーのくだりは秀逸だね。
女:で、はなしって?
男:……ごめん。うっかり忘れちゃった。
女:もー、ダメだなあ。
男:ごめんうっかり。まあでもそんなの関係ないッスってことで。
女:ところがあなたと関係してる?
男:してないしてない。
女:あ、そうだそうだ。あたしはなしがあったんだ。もー、はなし脱線させないでよ!
男:おれのせい!? ……まあ、いいや。ごめんね。で、はなしって?
女:え? はなしあるのそっちでしょ?
男:………………あー、おれのはなしはいいや。帰ろっか。
女:え? なんなのー?


『帰ろ』で。
No727-11/14 04:28
女/Dyuo
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「日課なんだ」
青年は、手を休めること無くそう答えた。麻布によって丁寧に磨き上げられた杖が、黒く妖しい光沢を帯ていく。
「コイツはかなりの気分屋でね。毎日こうして労ってやらないと、直ぐにヘソを曲げてしまうんだ」
「へぇ…」
少女は金色に輝く髪を揺らしながら、食い入る様に青年の手元をジッと見つめた。杖を拭く手が動く度に、少女の頭もその動きを追って右へ左へと動く。
「珍しいかい?」
青年は微笑みかけながら、やんわりとした口調で問う。
その言葉に少女は、いきなりパッと視線を上げた。
「違うわ。そうじゃなくて…」
「そうじゃなくて?」
「麻布は刺激が強いから、そんなにゴシゴシ拭かれると痛いらしいわ。シルクかウールで磨いてくれって言ってる」
「え?キミ…まさか、コイツの言葉が分かるのか?」
杖と意思の疎通が出来るなんて、よっぽどの術者でも難しい芸当だ。それなのに、どうしてこの少女が…青年は、ただただ目を丸くして少女を見る。
すると少女は満足げにニッと笑い、眩い光を放って何処かへと消えた。
残された青年は、茫然と少女が居た場所を見つめている。

彼が彼女の正体を知るのは…もう少し後のおはなし。


次は『おはなし』でお願いします。
No726-11/12 22:00
男/ソロ
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店に戻った僕を迎えてくれた、マスター自慢のブレンドコーヒー。
まだ温かな席に着くなり、淹れたてのコーヒーを静かにそっと置く。
伸ばされた腕から彼の顔を見上げると、難しいながらも優しい笑顔で一頷き。
そこでやっと僕は現実を受け止める。
芳しい蒸気に鼻の奥がツンとなる。

物語りの始まりはここ。
物語りの終わりもここ。

夏の寒い日に歩き出し。
冬の暖かな日に立ち止まった。

一部始終を見守ったマスターは、それでも変わらず優しさを与え。
変わらない毎日に安心してしまった僕は、変わる努力を何処かに捨ててきて。同時に何かをなくしてしまった。

「この店も私と同じで古いから…」

いつかマスターが言った言葉。リニューアルよりリフォームですねという冗談。
その時は2人で花を贈ろうという約束。

笑顔だった、あの日。


いつしか湯気の立たなくなったコーヒーを、冷めきってしまったマスターの自慢を、僕は一口で飲み欲し席を立つ。

頑なに代金を受け取らなかったマスターに頭を下げ、そして僕は店を後にした。

いつの日か必ず払いに来ると決めた、ある冬の晴れた日――



指定が無かったので適当な所から始めました(^^;
次は『日』で。
No725-11/12 10:04
男/ジョン
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地獄絵図ってこんな感じなんだろう。
女はそこらじゅうでビシってて股を開き、男は酒を飲みながら殴りあった。
僕は、僕の中の大切な何かが腐っていくのを確認しながらクスリを射ち、僕らの天国へと登りつめた。
隣ではしきりにケーコが吐いている。
巧くキマらなかったらしいよ、ってシンが言った。
無駄にデかいスピーカーからひっきりなしにレイディオヘッドが鳴り響き、僕は頭痛を覚えて店をでた。

ひんやりとした空気は少しだけ僕をクールダウンさせてくれ、凄まじい嘔吐感を緩和してくれた。
がたんっごとんっ、て変な音を奏でながら電車が通るのを見た。
始発がでる時間って事に気づいて、そろそろ洗濯をしなきゃって何故か思った。
ため息は白くて、今が冬だって事を思い出す。

来年の冬には、僕は生きているのだろうか。
ガタガタと手が震えてきた。
クスリがもうきれ始めたみたいだ。


僕はまた僕らの天国に行く為に、店に戻った。
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