PiPi's World 投稿小説
[編集|削除|古順]
[戻る|前頁|次頁]

No812-03/16 20:45
男/ジョン
SN39-hp8ObLxT
「さい……ころ?」
「そう、サイコロ。なんだか可愛いから。」
彼は、そういって3つのサイコロを投げた。コロコロと転がって、ゾロ目を出して止まった。
「なんで、誕生日プレゼントがサイコロな訳?」
「だからさ、可愛いからだって。」
「しかも――」
「ん?しかも?」
「――3つ。」
「そう、3つ。」
彼は、嘘ぶく様に笑った。彼が笑った訳を、私は知らないでいた。
「理由は?」
「だからさ、可愛いから。」
彼はそれ以上は何も言わず、私もそれ以上言わなかった。

また彼がサイコロを放る。
二回、三回と転がって止まった目は、またゾロ目だった。 6、6、6。
私は、それを見て泣いた。
ぽろぽろと流れ出でる涙は、私の頬を伝い、顎のラインをなぞって、床に落ちた。
「―――?どうしたの?急に涙なんか流して」
彼は、そう言いながら私の涙を指でぬぐい、キスをした。 私はギュッと眼をつむる事しか出来ずに、ただ涙を流した。

サイコロが3つ、止まっている。


サイコロが3つ。

サイコロは、3つだけ。


次回は『3つ』で。
No811-03/16 17:07
女/風蘭.
PC-olYSBTQK
 たった一度会っただけでも、好きになってしまう人間はいる。ならばその逆もしかり、だ。隣の席のこいつとは、長年喧嘩ばかりしている。
『なにさっきからチラ見してんだよ。カンニングしようたって無駄だよ〜だ(けっ)』
 解答用紙の余白に、奴がコメント(?)を書き込んで俺に見せてくる。教室の広さの割に生徒数が多いので、互いの席は結構近く、その気になれば隣の解答用紙が見えたりする。
『誰がお前の赤点答案なんか見るか、馬鹿』
 負けじと余白に書き込むと、さっそくレスが返ってきた。
『お前だって点数大して変わんねーじゃん(嘲』
『なにが(嘲)だ。合計点ではいっつもお前の方が低いだろが(蔑』
『通知表の評価が同じなら意味ねーだろ。第一、俺国語は得意だし〜(高笑』
『だったら「不如帰」って読んでみろ!』
『「ほととぎす」だろ。お前こそ「石榴」って読めんのか!?』
『「ざくろ」くらい誰でも読めるわっ』

 ……毎回解答用紙で口論するのはやめなさい。おまけに「嘲」と「蔑」の書き取り、及び「不如帰」と「石榴」の読みは問題として出題されています。きちんと解答欄に書き込みなさい。

※次の方は「さい」からお願いします。
 
No810-03/16 00:37
男/リンク
P902iS-nP6yOWCN
>809より

出会いは別れの始めである。そう、全てのものにはいつか終わりが訪れる。

目の見えない私の光となって長年付き添ってくれた、盲導犬ロッキー。彼は私の杖、私の盾、そして私の友だった。心の友…そう言っても過言ではない。

盲導犬センターから、職員がロッキーを引き取りにやって来た。初めて私の下に赴任してきた時はまだ若い青年だったが…年月は流れ、今は老いてその職務を全うするのが困難になってきたのである。何より、この別れはロッキーのためであった。

それでは失礼します、の職員の声を聞き、私は最後にロッキーを力一杯抱き締めた。今までありがとう、君の事はずっと忘れないから。だから、これからはゆっくり過ごしておくれ。さよなら…

突然、雄々しい吠え声。ロッキーの声か?今まで彼がこんな風に吠えた事なんてなかった。

「困ったな…こいつ、ここを離れようとしませんよ」

ロッキーを連れて行こうとする職員は当惑している。私の「ゴー(行け)」の命令にもロッキーは従わない。頑として動こうとしない。

まさか…まだ私と別れたくないと…言ってるのか…?

そう考えた瞬間、何かが胸にこみ上げて来た。私の両頬を、熱いものが伝った。

Next→『たった』で♪
No809-03/15 07:25
?/公羽(Akeha)
HI38-6rlxwBXr
『道路工事により
   この先通行止め』

錆び付いて、打ち捨てられた立て看板に、背を預けるかのように、佇む少年がいた。
よく見ると、じっとどこかを見つめてる。
その視線の先を、私は気付くと追っていた。

月──。

一杯に膨らんだ月が、太陽の光を浴びて、まるで白金のように輝いていた。

キレイ──。

私も少し、月の放つ美しさに、見とれてしまった。
そう言えば、今日は仲秋の名月。
しばらく忙しくて、そんな事も忘れてたな。


「好きなの?」
「え!?」
急に掛けられた声に驚いて、私は地上に視線を下げた。
少年が、すぐ目の前まで寄って来ていた。

その少年は、屈託のない笑顔で、再び口を開く。
「月。 君も好きなの?」
「ううん。 ただ、じっと見てたみたいだから、何見てるのかな、ってね」
「それにしては、じっと見てたみたいだけど?」
「見られてたんだ」
「お互い様にね」

それを合図にするかのように、どちらからでもなく自然に笑顔が溢れた。
それが不思議な少年。 美月(メィユエ)との、出会いだった。


Next
『出会い』『出会いだった』
No808-03/13 01:05
男/白いフクロウ
V705SH-OtmwnKgP
「『別れ道。右は楽な道、左はキツイ道に続きます。それぞれの道には門番がいて……』ってな感じのクイズあったじゃん」
「あー、論理クイズってヤツね」
「そうそう。間違えると辛い、みたいな」
「必死になって考えろみたいなね」
「でもさ、そいつってまだいいほうだよな」
「あ、オレも思った」
「なー。どちらかは楽なんだもんな」
「いーよなー」
そんなことを言い合いながら二人が見ている看板には、この先の道案内がある。

 『右:やたらキツイ道
  左:めっさキツイ道』


『道』で
<戻る|前頁|次頁>