PiPi's World 投稿小説
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No911-2008/11/19 11:19
女/Dyuo
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目をつむると、そこには確かに、沢山の星が瞬いて見えた。

「あっ、流れ星!」
彼女は目をつむったまま、嬉しそうに呟く。
「早く、何か願いごとを……」
手と手をあわせて合掌し、願いごとをブツブツと口に出す。
彼女は、完全にそれを星だと勘違いしているみたいだ。

誰か、彼女に教えてあげて欲しい。いや、突っ込んであげて欲しい。
まぶたの裏に見えているそれは、強い光…例えばカメラのフラッシュとかを直視した時に、よく起きる現象だということを。
そう、それは星なんかじゃなくて…自分にしか見えない、光の残像だということを……


次は『残像』でお願いします。
m(_ _)m
No910-2008/10/12 19:05
女/R
CA39-Gr8fH7Oc
雷鳴が轟く。

いきなりの強風にあたりの落ち葉も、逃げ出している。

ハッと窓の外から視線を外し、佳奈の方を振り返ると、もう佳奈は私の知っている『佳奈』ではなかった。

床からわずかに体が浮かび、なにかブツブツと呟いている。

そして憎しみに燃えたその目は真っ直ぐに私を見据えていた。


きてしまった

恐れていたことがきてしまった


この一年で佳奈の“異常体質”は治ったと思っていたのに・・・。

私は一年前の惨劇を思い出し、ソッと静かに目をつむった。


次は『目をつむる』でお願いします。
No909-10/02 16:11
男/白いフクロウ
PC-OtmwnKgP
 「暖めるためよ」
 私の答えが要領を得ないらしく、佳奈は首を傾けた。
 「あたためる?」
 「そう。お外寒くなってきたでしょう? だから佳奈ちゃんがサムイサムイってならないように、ストーブさんにお部屋を暖めてもらうの」
 そういえば去年の冬は、まだこの子は病院にいたんだっけ、と思い立つ。この子にとっては、家で迎えるはじめての冬だ。
 「へー。ストーブさんえらいねー」
 「そうね、立派ね」
 古い型だからちょっと心配だったけど、電気ストーブはコンセントに繋げたら、ちゃんと作動した。
 窓の外は紅葉もすっかり地面の絨毯に変わり、凩でも鳴きそうな景色だ。
 「わあ、あったかーい!」
 「触っちゃダメよ。火傷しちゃうから」
 「はーい」
 半年ぶりの仕事に張り切るように、ストーブは外と内の温度差を広げていく。
 結露が出来る前に窓ガラスに備えをしていると、ふいに佳奈が言った。
 「ストーブさんってママみたいー」
 「ん? どうして?」
 「だってね。いっしょにいると、佳奈がぽかぽかあっかくなってくるから!」



 『ら』で
No908-09/28 21:37
男/フロムポスト
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気をつけるんだよ、と声をかけようとしたが、息子の無邪気な振る舞いをそのままにしておきたくて、やめた。
地元は冬になっても滅多に雪の降らない地方で、雪がこんなに積もるほど降る事は珍しい、息子にとっては初めての体験だ。
息子が雪にダイブする姿を見ながら、ふと、自分の過去を思い出す。
冬になると、よくテレビに映る各地の雪景色。
物珍しさに子供心をくすぐられて、いつもそこで自分が遊ぶ姿を想像しながら、羨ましげにテレビを眺めていたのをよく覚えている。
あれから、大分時が経った。
ポケットに入れた自分の両手は、もう雪を触ろうともしない。
バンッ
ふいに響いた音で感傷から抜け出と、息子は妻から渡された手袋を脱ぎ捨て、雪玉を投げる事に熱中していた。
私は苦笑しながら、手袋を拾い、息子の元へ歩く。
どこかで失った物もある、置き忘れてしまった感情もある。
けれど、同じ位の物を私は与えられている。
例えば、ポケットに入れた両手。
それで息子の手を暖める事もできるだろう。

少し季節が早過ぎますね(汗)
次は「暖める」でお願いします。
No907-09/27 21:45
女/ミラージュ
KC3A-Ly1NzEob
「オカマ!?」
突然すぎる友達の言葉に思わずすっとんきょうな声で反応してしまう。
周りからの目線がいたい。
「そう、オカマ。お釜でもなければお構い無くでもない」
言い放つ友達はどこ吹く風か爽やかだ。
「彼女がオカマでその反応って…」
何とも言い難い気持ちになる。人種差別?ではないが、彼女が実は男でした的な真実を突き付けられたら、自分なら――落ち込むと思う。
いや、人間不振になる。
「まぁそのリアクションは分かるが」
そう答え、にやりと笑う。
「でも、まぁ、彼女にはそれを補うほどの魅力があんだよ」
無邪気に笑顔で笑う友達にふと思う。

こいつには気をつけよう、と。

次は「気をつける」で。
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