PiPi's World 投稿小説
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No39-2010/03/05 11:02
公羽(Akeha)(HI38)
 確信があった訳ではないのだがと、彼は懐から一片の花弁を取り出して来た。
どうしてか、気味が悪いくらい、白い色をした花弁。
自然と、死神を連想してしまう。

「惟親さん、それは?」
「父上の寝殿で見つけた。この花弁に心当たりはないか」
「そう言われても。けれど麻薬の花って言われても、そのまま信じてしまえそうですが」
「命。その麻薬、とは」
 僕は、麻薬がどう言った物か、知る限りの事を、惟親に伝えた。

「では、その麻薬とやらを用いれば」
「はい。一見呪詛をかけて、物の怪に憑かれたように見せかけ、人を殺す事は出来ない事では、ないと思います」
 そしてその花弁が、麻薬の花かどうかは、分からない事も伝えた。

 手の中の花弁に目を落とし、震えている。
 この世に、そんな恐ろしい花があるとは、想像も出来なかったろう。
 聞かれるままについ、僕の知識を話してしまったけれど、余り良くない事だったのかも知れない。

「すぐに調べさせる。命は」
 僕はそれから先の言葉を遮り、今度こそ私も連れて行けと、惟親にすがり付く。
「つくづく、慎みのない姫君だな」
「ぼっ、私を姫って呼ぶのは!」
 扇で顔を隠し、小馬鹿にしたような態度は、いつもの惟親さんに戻った証。


「証」or「し」
No38-2010/03/02 08:06
白いフクロウ(821P)
 ――悪魔だ。この男は、人間じゃない。
 かつての闇の王を心胆寒からしめたAの圧倒的な雀力は、最早人の領域にはない。
 しかし、こと麻雀において、人外のものは決してAだけではなかった。
 「魑魅魍魎が卓上を跳梁跋扈しているな」
 東三局、すでに流局が近い巡目に、対面に座る少女がふいに言った。
 Aはその瞬間、とても少女のものとは思えない気配を感じ思わず身を震わせる。それは――幾人もの雀士と牌を交えたAだからこそわかる、正に人外の気配だった。
 「衣が黄泉へ送り届けてやろう!」
 海底牌――最後の牌を掴むなり、少女はそれをヒキヅモった。
 「……ツモ。海底撈月」
 暗刻使いの薄いシャボをまるで当たり前のように引き当て、少女は卓に嵐を呼び込む。
 Aは、そして軽くフッと笑った。
 対峙する者がまさに怪物、好敵手足りうる強者であることを、確信しつつ。

『確信』
No37-2010/03/02 00:19
ソックスザウルス(CA3B)
恐らく「続けた」だと思いますのでコレで行きます。
「続けた結果がこれだよ」
2時限目の休み時間。罰ゲームを賭けて簡単なゲームをしていた。
相手は往生際悪く待ったをかけるが、三度目の正直で三連敗した。
「じゃ、罰ゲームといきますか」
相手は袖を捲ると腕を伸ばした。
「シッペなんてしないよ」
「な、何やらせる気だよ?変なことさせるなよ!」
俺は鞄の中のコンビニ袋から取り出した物を相手の目先にぶら下げた。
それは俺の昼飯でもあるアンパンだ。
「これを次の授業中に完食せよ」
「鬼かお前は!」
「やだな。俺は自分にもできることしか他人に強要しないよ」
「言い直すよ。お前は悪魔だ」

次は「悪魔だ」です。
No36-2010/02/27 23:53
髭(SN3K)
「だから?」
「つまり、僕がいいたい事は、そういうことなんだ」
僕がそう言っている最中に、彼女は煙草の煙を(僕に向けて)派手に吐き、つまらなさそうに「答えになってない」と言った。
「世界に足跡を残す?……はっ。なにそれ?ばっかみたい。出来ると思ってンの、あんたに。無理無理。改めた方がいいって」
「別に足跡を残したい訳じゃない。結果的に足跡が残れば嬉しい、って言ってるんだ」
「同じじゃない」
「同じじゃ無い」
「どう違うのさ」
そういって煙草をくわえてそっぽを向いた彼女の横顔を、僕は可愛いと思った。髪の毛が月の明りで光って揺れる。存在が際立つ。そんな気さえしてくる。
「目的の違いだよ。足跡が残れば嬉しいけど、その為にやるんじゃ無い」

ステージに立つ彼女にそんな言葉を向けたって、理解を得られないことを解っていながら。
僕は彼女に説明を続けた。
No35-2010/02/23 13:35
公羽(Akeha)(HI38)
 走った先にあったもの。それは、絶望だった。
瞬きする事も忘れ、腕に提げた籠さえ落とす。
 店先の隅にあったものは、胡鈴が愛した者の、成れの果て。
自ら流したと思われる、紅の池に沈む、紫温の背──

「紫温……」
 そして、そばで大きな刀を逆手に持ち、忙しそうに指示を出していたのは官吏であり、紫温の友でもある佑涼。
「胡鈴!?」
 胡鈴の姿に目を剥く佑涼には目もくれず。
 周囲に漂う、蒸せ返るような血の臭いも構わず、体を引き摺るようにして、物言わぬ紫温の元にまで近付くと、胡鈴はそこでくず折れる。

「ど……、して……」
 かすれた様に呟く言葉に、胡鈴を支えながら、事の経緯を話し出す佑涼だったが、今の胡鈴の耳に、届くはずもない。
 今の胡鈴に分かる事は、『もう二度と愛しい人が、笑いかけて来てくれる事は、ないのだ』と。
 それだけなのだから──


『だから』
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