PiPi's World 投稿小説
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No54-2012/04/22 22:28
小松(PC)
溶けない量のソレをコーヒーに入れた妻に、私は顔をしかめて手元のブレンド・コーヒーを口に含んだ。
深い香りと暖かさが体に染み込み、程よい酸味と南国の癖のある風味が甘さを打ち消してくれる。
淹れたての風味は台無しにされ、コクが追加されたミルクにまろやかに変えられてしまった妻の元コーヒーが哀れでならない。

「嫌いなら飲まなければいい」

思わずこぼれ出た私の本音に、妻は一気にまくしたてた。
「あら、コーヒーに何を入れるかなんて自由だし、ブラックは胃が荒れちゃうわよ?貴方私に胃潰瘍になって欲しいの?それとも私に選択権はないのかしら?人権の侵害だわ、ふふっ」
そう笑う妻に論点をうやむやにされた私は、怒る気にもなれず溜め息をついた。


次は『ためいき』です。即興で書くのって面白いですね!
No53-2012/02/14 18:27
奥山 紅葉(F906i)
沈んだ太陽が残したのは、オレンジ色の空。
遠く山の向こうが、鮮やかな夕焼けに染まる。
…意気地なしの私。
昇る朝日に勝利を誓い、キレイに包んだチョコレート。
高くなる太陽とともに、焦りと緊張が登り詰め。
傾きかけた日差しの入る廊下で、長い影を見つめたまま動けずに。
…終わっちゃった、バレンタインデー。

「奈津紀」

突然に、背中で響いたあいつの声。
握りしめるチョコレートはグチャグチャだけど…この想いは、溶けない。

次は『溶けない』で。
初参加させていただきましたm(_ _)m
No52-2012/02/08 19:48
冬汰(P07A3)
鳴りやまないゴングは、王者(チャンピオン)のKO負けの衝撃を物語っていた。しかも挑戦者が二十歳の若者となれば、会場が沸かないわけがない。
試合は1R(Round)から9Rまで、完全に王者が支配していた。
リング中央で挑戦者を迎え撃ちカウンターでポイントを稼ぐ。それは同時に、十五も歳の離れた若造相手にスタミナ負けしないための、試合前からの作戦だった。
9Rに入ると、挑戦者の手数が極端に少なくなった。
相手のスタミナ切れを覚った王者は、9Rまでに溜まったフラストレーションもあって、10R開始から一気に攻撃に転じた。
顔をガッチリ固める挑戦者に、ボディーを中心に攻撃を組み立て、何発かは確実にヒットさせる。
そして猛襲を続けた10R・0分58秒。会場に衝撃がはしる。
無酸素運動を続けた王者の左フックは、精度を欠いた大振りな一発だった。それを待っていたかのように、挑戦者はタイミングよく身体を縮めて素早くかわした。
空振りでバランスを崩した王者は防御に戻るが、一瞬速く挑戦者の左ショートアッパーが顎を捉えた。
防御は完全に解かれ、顔が剥き出しになる。
そこに挑戦者の渾身の右ストレートが撃ち込まれ、王者はマットに沈んだ。

次は『沈んだ』で…
No51-2012/01/30 19:16
らせん(N07A3)
「逆らえない……。なんで?」

 キミが好きだからさ、と私の目の前の男は語る。蛇のような鋭い眼光、それと対照的なボタッとしている体型。赤いチェックのシャツと黒いジーンズ。

 その男に対して恐怖しかなかった。怯えしかなかった。だから、逃げ出したかった。なのに、身体が動かない。足が動かない。手が挙がらない。言うことを聞いてくれない。立ったままの状態。

 原因は一つしか考えられなかった。先ほど男が呟いた、動くなという言葉。それから身体が動かなかった。何かの道具を使っているのか、あるいは……。

「わ、私を、ど、どうするつもり?」

 やっと絞り出した声は男に聞こえたのかわからない。だけど、私なりに必死な声だった。

 どうもしないさ、と男は口角を上げた歪な笑顔を私に向ける。悪寒が走る。頭の警鐘は未だ鳴りやまない。

※※※

お久しぶりです。
次は『鳴りやまない』か『い』で!
No50-2011/11/04 22:37
桜井(SH3J)

つぎは『逆らえない』、からでどうぞ。


個人的には複数のレスをまたいでもかまわないと思ったので、つづけますね。
前みたく、たくさんの人が参加してくれるようになるといいなあ。
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