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No5-2009/09/24 04:30
白いフクロウ(831P)
気を失ったその男を前に、琴梨はパニックになった。
(え? え、なんで? どういうこと?)
無理もないだろう、いままで楽しく話をしていた人間が突然失神したのだから。
当然要の体質など、琴梨が知るはずもない。
「と、とりあえず……」
要の身体を抱き抱え、ベンチへ座らせる。どちらかといえば華奢なほうの琴梨には重労働だったが、なんとかできた。
(息は……)
口元に手を当てる。呼吸はしていた。ほっと息をつく琴梨。
と、そこで琴梨は、音々に渡された紙を思い出した。曰く、『もし要になにかあったら見てね』とのこと。
慌ててポケットから紙を取り出す。するとそこには、こんなことが書かれていた。
『これを見てるってことは、また要が寝ちゃったのね。起こす方法は一つしかないの。
それは、お姫様のキス!
じゃ、よろしくねん』
「え?」
一瞬意味を図りかねた琴梨は、読み直してもう一度、声を上げた。
「えええ!? キキ、キスー!?」
『キス』で
No6-2009/09/24 21:02
リラ(F704i)
キスを3匹、まな板に並べながら思う。
──ガキは黙っとれ、という言葉を、昔はおれも嫌ったものだった。
どこから「大人」になったのか。いつから「大人」になったのか。
ラインは酷く曖昧で、振り返れば今日一緒に釣りに行った16歳の息子──さかなの始末どころか道具の片付けさえ殆どしなかった息子──は、食卓の椅子で携帯電話をいじっている。
昨日職場で若手を叱った。
トラブルの処理、揉め事の処理として有用な手段や常套句を無視し、結果取引先で騒ぎを大きくして帰社した者。
彼等は息子より年上な筈なのだが、とまで考えて思い当たった、若い日の自分の姿。
視野は経験と共に広がるものだ。さかなの始末にしてもクレーム処理にしても、示し実際に経験し、失敗しながら身につけていくものだ。
ガキはと斬り捨てるのではなく、彼等の思うところを受け止め、アドバイスとして手段を増やし、遣らせてみること。
大切なことを思い出した。昔のおれはこんな未来を許してくれるだろうか。
「許してくれる」で
No7-2009/09/26 00:00
ラクシェア(TS3C)
許してくれる?
駄目元で尋ねたよ、もう可能性は無いってわかってるけど。
君との約束を破るというこれ以上ない罪から逃れるため、君を裏切った罪を償うため。そのために僕は地を這いつくばりながら詫びよう。
止めておくれ、冷た過ぎるその眼。 僕が心を奪われたのはもっともっと暖かかったのに。
どうか慈悲をどうか僕に情けを………
『で、浮気の言い訳は以上かな?』
『はい、すみませんでした………』
土下座する僕の頭に乗せた足に、彼女は微笑みと共に全体重をかけた。
次は『全体重』でお願いします。
No8-2009/10/07 22:49
髭(PC)
全体重を僕に預けても、彼女は軽かった。それは落ち葉を思わせて、僕は泣きそうになった。
「私は死ぬのね、なんて哀しい事言わないわ。だってそうでしょう?そんなことすれば、私絶望してるみたいじゃない。」
彼女は、僕の腕の中でもがく様にそう言った。
「そうかな?」
「そうよ、絶対そう。私絶望なんてしてないわ。ただ少しだけ、希望を失ってるだけよ。」
僕の胸元が濡れていくのがわかる。それが彼女がもたらす涙から成るのか、熱い吐息がそうさせるのかは、僕にはわからなかった。
解らなくても、僕は彼女を強く抱きしめるべきだってことは、理解できたのだけれど。
「いたい」
彼女の、その細い腕が。白い肌が。透き通る髪が。弱々しい。
僕の体には余ってしまう程、彼女は小さい。
「希望もしてないけれど、絶望もしない。それって愛だと思わない?」
僕の、この僕の全てを賭けてもいい。僕は願った。非力な神に。偶像の世界に。
「これが愛だと思うから、私は生きるわ。そう。私は生きるのよ。」
彼女の重みを確かめながら、僕は、僕だけは、この時間がいつまでも続けばいいと、願っていた。
次、「願っていた」で。
No9-2009/10/09 23:41
ひで(830P)
願っていた。
自分の努力のたりなさを神仏に頼むのか?
願う真実より努力する真実の方が、神仏も受けとるよ。
その努力は自分が報われる為の努力ではなく愛する者の為の努力なら。
必ず
報われる。
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