PiPi's World 投稿小説
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No959-2009/05/30 03:25
髭(PC)
味方だったら良かったのに。と彼女が言うのと、僕がタンポポの綿毛を見送ったのが同時だったから、彼女は笑った。
タンポポ?
彼女はそう言う。
僕がそうだよ、って言うと、やっぱり味方だったら良かったのに、って言った。
彼女のその眼、その髪、長いまつげが、僕にはとても貴重なものに思えて僕は泣いた。
「私たちは独りよ。味方なんていない。いないのよ」
そうだよ、だから僕は続きを描いたんだ。
「でもタンポポは育つ。結局独りなのにね」
「僕は、君が好きなんだよ? そんなことって悲しすぎるじゃないか」
僕は泣き続けた。彼女が泣かないから。
「悲しいから、泣いているのね?」
違うよ。
「私だって貴方が好きよ。本当よ? 私、無駄な嘘はつかない主義なの」
僕はその時初めて悟った。僕らは一人だけど、独りじゃないってことを。
「味方なんてない。けれど私は、貴方のことが……好きなの」



次、『好きなの』で
No960-2009/05/30 11:23
フロムポスト(CA38)
好きなの。
もう一度彼女は呟いた。
ぼくは泣きながら頭の中のまだ冷静な部分で彼女の言葉の意味を考えた。
味方なんてない。
そう言った、彼女の心を、気持ちを、孤独を考えた。
理解しようとした、理解したかった。
けれど、考えれば考える程ぼくは彼女とぼくとの距離を実感してしまった。
ぼくらは一人だけど、独りじゃない。それだけは分かる。
けれど、一人が二人になる為には、一体どれほど彼女とぼくは近づけばいいのだろう。
離れている。
その事実に、現実に、慄然としてぼくの目からはまた涙が溢れた。
彼女は黙ってハンカチを取り出すと、ぼくの涙を拭った。
彼女の顔が近くにあった。
触れようと思えば、キスしようと思えば、軽々とそれができる程の距離に、彼女が居た。
こんなに近くにあるのに、ぼくらはこんなに近づいているのに。
それでも、ぼくは彼女の味方になれないのか。
ぼくらは一人のままなのか。
太陽が沈んだ。
夕暮れの残り火だけが、彼女の顔を照らした。
暗くなった教室、頬に伝わる涙とハンカチの感覚。
ぼくらはそれでも、一人のまま生きていた。

『生きていた』、で
No961-2009/05/30 22:12
笑麻(N905i)
…生きていた。


掌の中にすっぽりと納まった、小さな命 

公園の遊具の下、冬の雨にぐっしょりと白い毛並みを濡らして細かく震えていた。 

たまたま近道をしようとして公園を通らなかったら、見付け無かっただろうし、こうして共に暮らす事も無かった、筈。


でも、あの日から随分と時が過ぎた今 

誰よりも近くに居て、何よりも掛け替えの無いパートナーになっているこの子。

相手が人間じゃなくても、運命ってあるんだな…ってしみじみ思う今日この頃。
No962-2009/05/30 22:14
笑麻(N905i)
お題入れ忘れました!済みません(陳謝)

お題は“この頃”でお願いします。 
すみませんでした;
No963-2009/05/30 23:08
リラ(F704i)
この頃、矢鱈と酒量が増えた。

ふとした偶然で手に入れた、I.W.HARPER12年、の減りが、自覚している以上にはやい。

元々バーボンは好きだったが、此のハーパーは非常に美味しく。
ロックでだいじにだいじに、夫と仲良く飲んでいる。

──よいお酒を、少しだけ。

ハーパーの前はブランデーのクルボアジェ、其の前は矢張りブランデーのレミーマルタン。どちらもV.S.O.P.であった。


少しだけ、の筈だ。
ほろ酔うか酔わないかのラインで止めておく、というのが我々のルールなのだから。


其れにしては、然し随分、減りがはやい。

酒量が増えた、のか?


少しだけ気にかかった昨夜、不思議な夢を見て目を覚まし(庭も無いのにタンポポを植える夢だ)、台所へ水を飲みに向かった。


──誰か、居る。
からりと氷の音をさせ──ヴァニラの様なあの酒の香り、そして軽く軋む椅子の音、つまみにしているのかナッツ、そしてチョリソのスパイシーな香りも──

戸締まりは、したっけ?
誰?
誰がこんな夜更けに、優雅にうちのバーボンをロックで飲んでるの?


外を通った車のライトが一瞬、暗闇の台所を照らした──


『照らした』で
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